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[コメント] 血染の代紋(1970/日)

ヤクザ版「スーパーヒーロー大集合」。そう思って見るとそれなりに満足。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『人生劇場』シリーズなど義を重んじ義に殉ずる侠客たちを演じてきた、「任侠映画」の代表としての鶴田浩二。今作から3年後の『仁義なき戦い』シリーズに代表される、欲に飲み込まれ裏切りを繰り返す男たちの戦いを描いた「実録ヤクザ映画」の菅原文太。東映最長の裏人気シリーズ『不良番長』で組織に属さない一匹狼の意地を観せ続けてきた「無国籍アクション映画」の梅宮辰夫。結局のところ今作は、そんな様々なジャンル映画の主人公たちが一同に会するお祭り映画になってるんです。東映の得意とする「スーパーヒーロー大集合!」みたいなもんです。しかもそれを撮るのが東映の雄深作欣二ですからね。こんな贅沢な話はない。

 もちろん実際に『仁義なき戦い』が作られるのはこれより後年なわけで、この時にはまだ「実録ヤクザシリーズ」なんてものは存在しません。だから文太なんかはまだ「今ひとつブレイクしきれない有望若手」の枠を超えていない。ですがそれでもこの時すでに、上記のようなジャンル分けはでき上がっているんですよね。それは最早それぞれのスターたちが自然と放つ光のようなものなんでしょう。一人一人が非常に魅力的で、またしっかりキャラクターが立っています。

 ただ残念ながらその光、互いに交わって明るくなったとは言いがたいです。むしろ互いの魅力を抑え合ってしまってる感すらある。結局それぞれの格好良さのベクトルが違うから、観てる側のテンションが今一つ上がり切らないんじゃないかな。また作る側の深作もまだ任侠映画の格式から逃れ切れていない。要は何か全員が全員、思い切り羽根を伸ばせていない印象を受けるんですよね。ちょっと勿体ないような気もしますが、反面交じり合えるのはやっぱりここまでな気もします。深作が無理ならもうそれでいいのかな。クライマックスで突如始まる手ブレの嵐と狂ったカメラワーク、それこそがテンションの上がり切らない本作に対して、深作が見つけた「一番爆発力のある着地点」ってことなんでしょう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)水那岐[*] sawa:38[*]

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