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[コメント] 害虫(2002/日)

「よかねえよ。」(レビューは作品後半部分の展開に言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







上映終了後、近くに座っていた二人連れの女性のどちらかが一言。 「これでいいの?」

いや、よかねえよ、タイトル見ろよ、何て書いてある?『害虫』だろ、こんなタイトルなんだから、「良かった」という終わり方するわけないだろ、と内心思う。

作品の冒頭、彼女の周りでは絶えず大きな音が鳴り響く、まるで彼女にリズムを作らせまいとするかのように。

それに対して作品の後半では、あれほど鳴り響いていた音が次第に消失していく。それとともに彼女は自分なりのリズムを刻み始める。この作品、あらゆる音源が画面にも映し出されるのが印象的だったが、放火の準備をするシーンでは、音源が示されないままナンバーガールのギターロックがかかる。それは彼女自身が生み出したリズムを体現していたかもしれない。

しかし、彼女は自身が生み出したリズムを受け入れるだけの器の備わった年齢ではなかった。放火の後など、自分のリズムの強烈さに戸惑いの表情を浮かべるのが印象的だった。どんなときでも(母親は学校に行っていないことを知っていたにもかかわらず)中学の制服を身につけていたのもそのあたりと関わってくるのかもしれない。(彼女には服を選ぶだけの選択肢が与えられていなかった、もしくは選ぶだけの器を持ち合わせていなかったということか?)

カットのつなぎの唐突さでユーモアを生み出し、重くなりがちな本作の息苦しさを解放してくれたのは、非常に好印象だった。

しかし、作品全体について言うなら、うーーん、悪くはないけれど、これでよかったかというと………よかねえよ。

*コメントのセリフが使いたくて、引き合いに出させていただいた、私と同時の回で見た女性二人には申し訳ありません。(いや正直私も終了直後ぽかんとしてしまいました。)もしシネスケの会員だったら、さらに申し訳ありませんでした。

(評価:★3)

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