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[コメント] ダーティハリー4(1983/米)

全米中の"Make my day.(楽しませてくれ)"への見事な返答。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







センチメンタル・アドベンチャー』や『ファイヤーフォックス』といった監督作品が母国ではいまひとつ観客に受け入れられなかったイーストウッドは、起死回生ともいえるヒット作を必要としていたのだが、それならばと発表したのが本作である。前作より7年ほどが経過し、もう一度彼の演じるハリー・キャラハンを観たいと思っていた映画ファンは多かったことだろう。そう思うと、なるほど、これは懸命な選択であったと思う。

がしかし、これをただの映画で終わらせないのが彼のすごいところである。かくして彼の記念すべき監督第10作目は(特に彼のファンにとっては)心くすぐられるセルフパロディ映画となった。

まず冒頭は夜景の空撮から始まるこの映画だが、空撮で始まる映画というと忘れてならないのが彼の第1作『恐怖のメロディ』であり、波打ち際の断崖というロケーションなどもこの映画を想起させるには十分なものがあって、彼のファンとしてはもうこれだけでワクワクしてしまったのだった。

あと、彼が逃げ込んだと思われる箱が蜂の巣状態に撃ち込まれる様はやはり『ガントレット』だろうし、クライマックスの何ともカッコイイ逆光での登場からの格闘は『荒野のストレンジャー』。さらにいうと、老人ホーム車でのカーチェイスや相棒の死などは本シリーズになくてはならないシチュエーションだろう。あと相棒といえば動物が息抜き的なコメディアンぶりを発揮するところなんかも彼の出演作ではお馴染みの光景だ。そんなことを考えると、この映画でのハリー・キャラハン自体がもうすでにセルフパロディ的な存在だったんじゃないかとも思えてしまうから困ったものだ。

あとこれはセルフパロディではないのだけれど、前述の逆光の使い方なんかは、サーティーズの撮影で逆光というとどうしてもフォッシーの『レニー・ブルース』を思い出すのだけれど、そのあたりにもヒントを得たんじゃないかと思う。が、フォッシーがその逆光を多用していた(ような印象があるのだが、違っていたらご容赦願いたい)のに対し、彼はここぞという時のみにそれを使い、この映画の中でも最高に素晴らしいショットを導き出していた。このあたりはもう本当にしびれるものがあった。

もちろん、このような話以前にこの映画が本当に面白い作品で多くの人々に愛されたことは、この映画が本シリーズ中最大のヒットを記録したという事実からも明らかであろう。

そのような意味でこの映画は、劇中の台詞ではないけれども、全米中の"Make my day.(楽しませてくれ)"への見事な返答であったといえると思う。

ストーリー面での難点も分からないでもないが、映画的な魅力という点で本作はシリーズ中では第1作と並ぶ秀作だと私は思っている。

(評価:★4)

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