[コメント] ジャイアンツ(1956/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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武骨なテキサス親父を演じたロック・ハドソンが柱となり、東部魂を忘れぬままにテキサス女として強い存在感を示すエリザベス・テーラーが添え木となり、単独主演だとアクが強すぎるジェームズ・ディーンが脇にまわり、緩やかなスティーヴンズ演出にアクセントを加えるという配役の妙も素晴らしい。
特に大胆なテキサス料理に卒倒しながら、翌朝誰よりも早く起きて家事に励むリズの姿はとても印象的だったし、彼女に思いを寄せるジミーとの関わりについても、彼女が誰よりも美しく魅力的な女性に見えるから成り立ったものである。
しかし、女性といえば、残念ながら途中退席してしまうマーセデス・マッケンブリッジの前半における圧倒的な存在感も忘れてはなるまい。長い話の流れの中でつい忘れそうになってしまうが、あのジミーを真っ黒に染めた油も、元はというと彼女が彼に贈った土地から発したものであり、それを大事に守り続けて勝負に出たがゆえの彼の成金人生だったのだ。そういう意味でも、この物語に与えた彼女の影響は非常に大きい。
また、そんなジミーが、結局は本当の幸せを掴み取ることができず、酒に溺れながらテーブルとともに倒れていく図も本当に哀しかった。しかし、その悲哀が見事に描かれたのも、何度も言うが、それまでの彼の半生をも丁寧に描きこんだスティーヴンズの演出があったからである。
そんな物語のクライマックスが、バーガーショップでの殴り合いということもにもしびれた。あのパンチが飛び交う寸前に入る拳を固めた両雄のワンカットは、これぞ殴り合いという迫力だったし、現代の映画のように変にガラス窓を割ったりせずに、あくまでも拳で魅せ切った演出には本当に拍手を贈りたかった。また最後、そんな傷だらけのハドソンを包み込みながら、白髪の混じったリズの語りでこの長い物語が終わっていくという締めもよかった。
確かに人によっては冗長に感じるところもあるだろうが、先にも述べたように、この映画における名場面の数々が生まれるには、やはりこの長さが必要だったのだと私は思う。最近は無駄に長い映画が多すぎるように思うが、この愛すべき家族ドラマに費やした3時間は、私には至福のひとときであった。
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