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[コメント] 鰐〈ワニ〉(1996/韓国)

残酷かつ美しいラストのあの一連のシーン、ただもうそれだけは擁護したい。それ以外は、微妙だったのが正直な感想だが、決して嫌いにはなれない不思議な魅力はある。 2007年6月1日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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この作品を見る前に「キム・ギドク監督作品」という冠を取った場合、果たしてどれだけの評価が出来たかは疑問だ。そういったある種の先入観も含めて評価すべきだとは個人的に思うし、現にそういった視点を抜きにしても、やはり現在のギドクの片鱗を味わえる要素は多分に含まれていると思う。

しかしながら、やはり作品としての感想は、正直なところ「何かよくわからなかった」というのが一番に上がる。その「よくわからなかった」は、決して「何だかわからんけど、凄いものを見てしまった」というものではなく、クエスチョンマークが頭上をクルクル回っているそれでしかない。正直、説明不足が過ぎる作品ではないか、と思ってしまう。

しかし、だからと言って批判・否定するほどこの作品が酷いかと言うとそうでもなくて、上述のように現在の監督の片鱗を感じさせるようなカットもあったりして、決して嫌いになれないというのが大きい。その意味で、なぜか★3よりも低い点数をつけようとは思えない不思議な作品とも言える。そういう意味で考えれば、(デビュー作で、しかも酷評された作品とは言え)彼の才能が確実なものであることを感じさせる映画である。

特にラストシーンの、川の中に作られた「部屋」(=ならず者が最後に逃げ込める唯一の場所、それは「かつてとは違って薄汚れた河の中の空間)に愛した女が自分をおいて飛び込み、それを後追いして心中を決意しながら、それでも途中で止めて浮き上がろうとして結局死ぬ、という一連のシーンの悲壮ながらある種の美しさを感じさせるのは、後の『魚と寝る女』だとか『悪い男』だとか、そういう鋭さを感じて、ドキドキしてしまった。あのラストの一連のシーケンスだけは、どうしても擁護したい。

ギドクはいう「私の人生であった最も醜悪な人間たちを『ワニ』の中に凝縮させた。そして、彼らは本当に悪人だろうか、と繰り返し自問自答しながら、シナリオを書き直し、撮影した」。

この映画のラストの一件も含め、作品全体として嫌いになれない理由は、やはりギドクの想いがこういった所に重点を置いていたからかもしれない。

(評価:★3)

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