[コメント] ニューオーリンズ・トライアル(2003/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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『ラスト・サムライ』に『ファインディング・ニモ』だとか『ミスティック・リバー』みたいな大々的に宣伝されている作品が多くかかってる今現在、地味な法廷サスペンスモノのチラシを見つけてちょっと嬉しかった。
恐らく客はあまり入らないのだろうけど、きっと手堅くまとめている作品なのだろう、とちょっとばかりは期待しての鑑賞。
ジーン・ハックマンはキャスト見た時から悪役って分かってたけど、まんまイメージ通りの役柄で顔がにやける。ただ、他の役者は、イマイチ精彩に欠ける。と言うか、B級キャストがA級ドラマを演じようとしたら安っぽく見えてしまった、と言う感じだろうか。いや、もっと言うと最初からA級の脚本ではないのだと思うけど・・・。
全て丸見えで、予想通りの展開には如何なものかと思うし、裁判シーンの魅力の希薄さには苦笑を隠せない。裏でやってる事も(実際の現実を知らないので断言できないが)やりすぎで、安っぽい。
確かにあれだけ過剰に描写する事でジーン・ハックマンの役柄が際立つのだろうけど、正直やりすぎなのでドラマが安っぽく見えてくる。
別に大して悪い脚本ではないと思う。確かに、もっともっとトリックを利用して伏線を張り巡らせたり、法廷でのシーンにも台詞の上手さを見せて欲しかった。今年一発目に『情婦』を観たのだが(比べる事自体バカだけど)足元にも及んでいない。
っていうか、ジーン・ハックマンのやり口が余りに派手で乱暴すぎる。あれではどれだけ役者が頑張った所で、どれだけ話が練りこまれていてもダメ。この手の映画は、大掛かりな演出を必要最小限に抑えながら引き込むべきじゃなかろうか?
陪審員の家に放火するなんてタダのアホだろ。そりゃ票が欲しいのとは少し違うと思うぞ。
そういう訳で、既に法廷サスペンスモノとしては失敗している、と思う。だけど、2時間ちょいの長尺を、さほど飽きさせずに見せてくれたので、ある程度のツボは押えられていたのだと思う。
キャストも最初見た時は、知名度の高からず低からずの俳優を揃えて、中々渋いかな?と思ってたけど、実際鑑賞してみてびっくり。これがとんでもなく安っぽく見える。っていうか、ジョン・キューザックとレイチェル・ワイズはジーン・ハックマンを際立たせる為だけに起用しただろ?
庶民の味方弁護士、ダスティン・ホフマンは中々良かった。特にトイレでジーン・ハックマンに詰め寄り、口論になるシーン。あのシーンはこの映画で一番素晴らしいシーンではなかったかと思う。
一応監督はアメリカ銃社会に対して何かを言いたいのだろうか?銃製造会社を相手取っての訴訟。(現実では知らないけど)作品中では「史上初の快挙」となる勝訴。だけど、何か、最終的には監督の主張みたいな物は曖昧、と言うかほぼ皆無のまま終わってしまっている気がする。
題材は良いのだから、こんな無駄に派手にせずにもっと硬派にストレートに描くべきではなかろうか?
個人的に、この題材なら変にエンターテイメントにせずに社会派の骨太ドラマにすれば良かったと思う。そうすれば恐らくジーン・ハックマンも必要ないのでもっと脚本に金を賭けられると思うぞ。
少なくともこのプロット(要するに裁判の裏側の駆け引きをエンターテイメントとして見せる)を「銃製造会社 対 銃乱射事件被害者の関係者の嘆き」を通して描くべきではない。
◇
クライマックスでの、陪審員の討論時間で、主人公と別の男が口論になる時、「夫がM−16で撃たれ様がなんちゃらかんちゃら」と言います。
実際、銃乱射事件で使用されたのはセミオートマティックの”拳銃”で、M−16は突撃銃(ライフル)なんですよね。「ん?この台詞はもしかして伏線か?」と一人ワクワクしていたけど、最後まで何も起こらず。
おいおい、伏線のつもりかそうじゃないのかは知らないけど、伏線なのだったらきちんと回収しろよ。台詞ミスならきちんとチェックしとけよ。
と、突っ込んでみた所で、実を言うと最初の30分は部活の疲労で少し寝てしまっていたので、もしかするとそこにM−16が登場してたのかもね。多分登場して無いと思うけど。
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