[コメント] 僕たちは希望という名の列車に乗った(2018/独)
映画を見終った人むけのレビューです。
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いわゆるハンガリー動乱時代の東ドイツの実態です。ちょっと古すぎて僕でも過去でしかなかった時代だ。まだ、東西ベルリンが行き来できていたという不思議感もあり面白い。
普通の青春を送っていた高3のヤングたち。18歳という彼らだからこそ感じられる・考えられる唯一の世界は実は腐りきった大人なんかよりずっと広く、鮮烈でしかも深いのだ。僕の18歳も確かそういう色彩であったことをいまだしかと覚えている。
しかし、彼らから見た現実の体制はいかに。がんじがらめの、ある意味エリートを養成するためだけのヒエラルキー。そういう構造に疑問を感じない若者はいないはず。
だからこそ、自由という生きてゆくうえで一番基本的なものに制約されている現体制に、彼らは自ら犠牲を払ってもそこにあるべき世界に飛翔しようとする、、。それは過去、彼らの親たちがしてしまったことの繰り返しから脱却するものでもあった。いわゆる解放という文字であらわされる自由への獲得を目指してゆく。
この映画、最初の方の自由への思いで黙とうする部分は「白バラの祈り 2005」、卑劣にも友人を裏切り者らせようとする権力に立ち向かう教室風景は「いまを生きる 1989」に類似性を感じる。
特に後者の教室で権力に立ち向かう若者たちの一人一人の行動には急にこみ上げるものがあり、号泣しかける。
この手の映画でよくある悲惨さから逃れているラストは、あの時代にも前をしっかりと見据えることで希望が生まれるんだということを教えられ、感動する。しかし、実際は残された家族たちには粛清の牙が向けられたんだろうなあとぼんやり想像もする。
やはり若い人たちが何かを感じ行動する映画はこんな年寄りでも俄然エネルギーを感じ、勉強になりますネ。
父親たちの時代を作ったのも父親たちであり、若い人たちは自分たちで自分たちの時代を築くべきだと思う。そう、今の日本だって、知らぬ間にどうなっていくか分からない。自由は自分でしっかりと獲得し、守るべきだ。そんな当たり前のことを教えられました。
秀作です。今年のベスト3には入るだろうと思います。
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