[コメント] 春夏秋冬そして春(2003/独=韓国)
映像にすべてを表現しつくそうとする試みはこの映画の場合、かなり成功している。だから、言葉は敢えて必要なかったはずだ。しかしそれではということで、言葉を入れる。シンプルなんだ。人間の一生を季節になぞらえて描く。或いは暴いてゆく。
作品は実に映像が立派で、池のど真中にある寺を中心に四季を追ってゆく。 すなわち、人間の四季でもある。 映像はどのシーンをとっても素晴らしく凝縮している。セリフが要らないぐらい脚本がよく練られている。
人間の悪、欲望、憎悪、赦し、悟り、、を輪廻形式で、見せてゆく。 韓国映画で、漢字をこんなにまともに見たのも初めてではなかったか。 仏教が韓国でどのぐらい普及しているのか分からないが、日本とそう変わらないものであると思った。
しかし、この手の哲学的な極みは従来の日本映画でざらにあるから、僕はそう心に響くものでもなかった。この手の仏教的世界はやはり日本映画のほうが深みがある。シンプルなんだけど、やはり浅いんだ。いや、シンプルすぎるのである。感動さえ拒んでいる感じだ。韓国映画でも日本に及ばないところがあるということか。
だが、人間の生と死を自然の四季とともに、これだけ鮮やかに描き切ったキム・ギドクにはやはり賛辞を送りたい。 彼にとっては行き着くところまで行ったのかもしれない、と思われる見事さである。
また、ため息の出そうな映像にただならないものを感じたのは僕だけだろうか。もう映像でこの作品は人間の生と死、欲望、憎悪、そして空(くう)までを描いてゆく。
ラストの輪廻は日本にない明るさがありいい。
韓国映画ではめずらしい漢字の露出に実は深く感心した自分であった。 春夏秋冬では最初の春が一番面白く鑑賞できた。背中の石の訓示は重い。
ほんと、これぞ秀作。
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