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[コメント] 巌窟の野獣(1939/英)

表現主義風味の暗黒。そして上下3種のヴァリエーション。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







序盤のジャマイカ宿の構造の面白さが秀逸。複雑な構造を十全に使い、一つの建物の中でも、床や壁や階段や扉や死角を隔てて、ヒッチらしく様々な筋書きを展開させている。

それにしても、時折サイレントかと見紛うばかりに表現主義的な画面で、チャールズ・ロートンの体躯がヤニングスのそれにオーバーラップする感覚にすら陥る。それはさておき、数々のヒッチらしい演出の中でもとりわけ印象深いのが上下とロープを使った演出。ロープを切って救う→ロープを伝って救いを絶つ→ロープをよじ登り転落する。先の2つのシチュエーションで、ロープによって他人の手に運命が委ねられる様を描くことで、最後にロープを使わずに自ら転落を選ぶ様がより印象深く映った(そのお膳立てを整えるかのごとく、ヒロインが必死で治安判事を庇うセリフが印象的)。それが趣旨かどうかは分からないけど、非常にいろいろな角度から深読みができる興味深い演出、と思う。

(2009/6/20)

(評価:★4)

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