[コメント] トーチソングトリロジー(1988/米)
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自分が母親を愛する位あるがままの自分を愛して欲しいと押し通した主人公も素晴らしいが、「理解できない」で破綻しそうになりながらも、それでも消せない「愛してる」に気づいて、自分のスタンスで「理解しよう」と決心した母親にも拍手を送りたい。ベルイマン映画の母娘関係に疲れたあなたにこの一本、的な最高の結末。
世間になかなか認めてもらえない故に、ゲイの人たちは生きづらいってこと以上に自己愛をなかなか確立できない辛さがある。ましてや自分の周りの世界を愛さずにはいられない主人公なんてなおさら。「十分に愛せない」ってのは裏を返せば「十分に自分を愛しきれない」ってことなんだろうな。愛するものに認めてもらえない自分は一体何なんだろうって。そこらへんの悶絶振りが手にとるように伝わってくる。
自分のすべてを認識した上で自己愛を持つってのは、そんな簡単なことではない。認識できてない上での自己愛は、ただのわが身可愛さでしかないし。絶えずゲイであることを否定されがちで、しかも自分以上の容姿の恋人を選んだ主人公にとって、本当の意味での自己愛を持つことからしか幸せは始まらなかったんだろうなぁ。愛するものの前で、なんのやましさもなく胸を張れるかって感じで。
でももう大丈夫。自分という存在を創った母親に「GO」サイン出してもらったし。これで初めて自分が十分に愛するに値する存在だってことを実感し、「十分に人を愛する」ことの意味を実感できたに違いない。そんな幸福を胸に抱きしめた印象のラストシーン。よかったな、と思わず声をかけたくなる。
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