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[コメント] 東海道四谷怪談(1959/日)

演出過剰の気がある中川信夫だったら映えるだろうな。と思っていたが、ここまではまるとは。見事な作りです。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 有名な鶴屋南北による『東海道四谷怪談』を新東宝が誇る怪談映画の第一人者中川信夫によって映画化した作品。一時期歌舞伎が好きで、特にこの『東海道四谷怪談』は色々調べたりもしたし、講談本も読んだ。とても好きな作品だ。それを中川信夫が作ると言うのだ。期待しないわけにはいかない。

 元々歌舞伎というのは過剰な演出で目を惹く部分があるのだが、こういう怪談話でさえご多分に漏れず。で、テレビで二度観たのだが。最初に観た時はその派手さに驚いた。最初の感想は「なに?これ?」だったが、それでも歌舞伎とは“見立て”で観るものである事が分かってから二度目を拝見すると、素直に観ることが出来た。

 それで本作だが、やや原作とは異なる部分があったりもするが(有名な戸板返しのシーンが小平じゃなくて卓悦だったとか)、それでも今まで観た映画版『四谷怪談』では最高の出来だった。特に主人公伊右衛門役の天知茂が巧い。思いこんだら一直線ながら、基本的には真面目な伊右衛門が己の内にある闇に食われてしまう過程が見事。特に端正な天知だからこそ、でもあるが。それに若杉嘉津子演じるお岩も強烈な印象を残す。特にあの髪がずるりと抜けるシーンとか…

 とにかく画面がけばけばしい程の極彩色と闇と言う両極端な演出は、歌舞伎の演出を超えた派手さで、もう、「やれやれ。やってしまえ」。と叫びたいほど。ここまで突き抜けると、かえって爽快感さえ感じる。良いねえ。ラストの、朝日の中を子供を抱いて昇天していくお岩の清々しい笑顔も気持ちいい。

(評価:★4)

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