コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 会議は踊る(1931/独)

ナチスの大罪は映画にも及ぶ。故にこそ本作は映画史上における、戦前ドイツ映画の最高峰にして遺作。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 フランス革命により王政フランスは倒れ、共和政フランスが誕生した。その中で台頭したのがナポレオンで、彼はその共和政をも粉砕し、帝政フランスを作り上げ、ヨーロッパ中を荒らし回る事になる。だが、ナポレオンの失脚によって取り敢えずの平穏さを保つ事ができた。

 その戦後処理を巡って1814年から15年にかけて開かれたウィーン会議は自国の利益問題に絡み、遅々として進まず、“会議は踊る、されど進まず”と言われるようになる(それでもネーデルランド王国や、サンマリノ共和国の成立、スイスの永世中立を決める、など重要な事も決められていたんだけど)。

 その歴史的事実を踏まえ、軽快なオペレッタとして仕上げた作品。トーキーが始まったばかりでこれだけのものが作れたと言う事実に驚嘆するし、何より当時のドイツ映画の見事さには惚れ惚れする。兎に角軽快に楽しく仕上がっている。

 歌に始まり歌に終わる映画であるが、その歌の用い方がなんと言っても良い。特に有名な「ただ一度だけ」の流れる箇所は帽子屋の店先から城までワンカットの移動撮影が用いられているのが凄い。このカットを見るだけでも、当時の「ドイツの映画はぁ〜世界ぃぃ、一ぃぃ」(古っ!)と言ってさえ良い。  しかし、これだけの技術力を持ったドイツ映画界も、この後、映画を大衆宣伝の手段として利用としたナチスの台頭により、映画関係者は次々と国外へ流出していく事になる。この映画においても、製作のエリッヒ=ポマーも、監督のシャレルも、音楽のヴェルナー=リヒャルト=ハイマンも、そして主演のハーヴェイもドイツを去っている。

 更に、本作は1937年にナチスの手によって、反国家的映画とされてしまう…

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)りかちゅ[*] 町田[*] ジョー・チップ tredair[*] シーチキン[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。