[コメント] 旅情(1955/米=英)
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リーン監督の初期作品は恋愛ものを得意としており、後期になるとビッグプロジェクトを手がけるようになるが、本作はその転換点となった作品と言っても良いだろう。事実本作は監督初の大型予算プロジェクトで、この作品により監督は世界に認められ、次々と大作をものにしていくことになり、次回作こそが『戦場にかける橋』となる。
この手のラブロマンスものは苦手な部分はあるけど、ここでのヘップバーンの演技が素晴らしいのは事実。この人は失礼ながら綺麗とは決して言えないのだが、それを充分知っていて、それを演技に行かすことをよく知っている人で、それこそが彼女のオーラを増している。
その華を上手く活かしたのが本作の特徴で、ヘップバーンのために作られたと言っても構わないほど見事にはまっていた。
演出の巧さも映える。ヴェニスの町のごみごみした路地から広場へと至るカメラ・ワークは見事で、一瞬にして視界が広がる感じ。そして最後、ヘップバーンを乗せて去っていく列車のロングショット。これが又非常に見事。これがハイ・ミス役であるヘップバーンの心境と連動して行われているのが良い。コンプレックスの固まりが、恋をすることで少し広がり、そしてそこから解放されることによってより広い心を持つに至る。後の『アラビアのロレンス』で多用されることになるロングショットはこんな所にも活かされているわけだ。
ただ一方、物語はありきたりと言うにも何な出来で、どうにも私には合わないのが何ともかんとも。もっと楽しめても良かったはずなんだけどなあ。
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