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[コメント] 紳士協定(1947/米)

余談だが、イスラエル建国は本作が製作された翌年の1948年。なかなか皮肉な符号だ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 当時アメリカ西部を中心として厳然として存在したユダヤ人差別問題に真っ向から立ち向かった作品。20世紀フォックスの名プロデューサーであるザナックの肝いりによって作られた本作は、フォックスの精鋭スタッフを総動員させて作られ、監督に社会派映画の雄カザンを起用し、主役はやはり“正義の人”が最も似合う男、グレゴリー=ペックを起用し、脇を締めるキャスト陣もそうそうたるもの。1947年アカデミーでは見事オスカーをもたらすことになる。

 アメリカだけではないが、映画産業はリベラルをもって良しとする風潮があり(一方では製作者側は売らねばならないため、視聴者の望むものを作ろうとする。映画とは常にそのせめぎ合いで生まれるものだ)、こういった社会派作は割合初期から映画の一ジャンルとして存在するが、これ以前の時代だと戦争のお陰で国策作品に押されがちだった。ようやく戦争が終わり、これからは作りたいものが作れる。と言う生き生きした時代の息吹も感じられる。しかも本作は本来抑える側にいるはずのプロデューサーの肝いり。自然と力が入ろうというもの。

 ただ、題材が題材だけに国内外で相当に物議を醸した作品でもあり、オスカー作品であるにも拘わらず、公開直後には日本では上映される事はなく、1987年にようやく公開されている。

 ペックのパーソナリティによるものか、内容は重い題材の割に決して明るさを失わず、軽快に進んでいく。客観的に見る限り、差別を真っ正面から見据えて、しかもエンターテイメントとして作られた良作映画には違いないのだが、劇中そこはかと見え隠れする、いわば「カザン監督らしさ」の部分が私にはどうも引っかかってしまう(これは単に私自身がカザン監督と相性が悪いだけ)。

 そう言えば舞台がマンハッタンで、夏と来れば当然避暑の光景が見られるのはアメリカらしいね(『七年目の浮気』(1955)はそれが主題だったし)。 

(評価:★3)

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