実は企画協力の中に岡本喜八の名前を見かけたので、ちょっと期待はしていたのだ…

　一つはっきりしているのは、とことん私はこういった純愛ものは苦手だと言うことを再認識したと言うこと。この辺微妙なところで、私のモロにツボにはまるのは「家族を作る」話であって、「延々恋人同士がべたべたする」とは違っているらしい。はっきり言って退屈も良いところ。

　前半部分は決して悪くなかった。敬輔が千織に対して持っている抑えられた愛憎とか、想い人だった敬輔を待ちかまえていた真理子の細やかな配慮ある行動など、結構良い線をいっていたと思うのだ。だが、後半になって、話がファンタジーものへと移っていくと、今度は間の取り方が大変悪くなってしまい、ベタベタベタベタ…ばかり。いい加減げんなりしてしまった。キャラは決して悪くはないんだけど、本来もっと精神的な結びつきや拒絶と言ったテーマを大切にすべきものを、表面的な“想い人と結ばれる”事だけになってしまっているので、勿体ない作り方をしてるとしか思えず。

　吉岡秀隆はこういった繊細な役をやらせるには適した俳優だと思うのだが、この作品に関しては、「何を考えてるのか分からない男」にしか見えず。前髪をかき上げる行動を取るたびに、不気味さを感じる。それと尾高杏奈の脳障害を持った役所も、残念なところで微妙にはずれ。立ち居振る舞いが洗練されすぎ。もう少したどたどしさがほしかったところ。