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[コメント] 21グラム(2003/米)

キャラクターは最高レベルに素晴らしい。しかし『21グラム』という魅力的な題を使っていながらことごとく期待を外された感じ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 これが私にとってはイニャリトゥ監督の最初の作品となるが、傑作と評判高い『アモーレス・ペレス』の監督だし、オスカー男優二人の共演、それに数々の映画賞に輝いていると言うことで、未知数ながら期待して観に行く。

 確かに、時間軸をずらしたり、三つの物語が交錯して一つの物語に収斂していく構成や、光度を抑え、アングルに凝った画面など、好みは好みの作品だった。

 …確かに好みのはずなんだが、なんだか入り込めない。デル・トロ、ペン、ワッツそれぞれの主人公は立っているし、確かに演技については言うまでもない。巧すぎるほど。しかし、印象に残ったのは、実はそれしかなかった。見応えはある。だが、物語そのものが最初から最後まで不完全燃焼で、退屈なまま時間が過ぎる。

 三つの物語を、しかも時間軸をずらせると言うのは面白い試みだったと思うのだが、ただでさえ最初の内、三つの物語を理解するのに苦労するのだから、時間軸をずらすことで、最初は本当に訳分からない。大切な掴みの部分で観客を突き放してしまっていた。しかも悪い意味で画面に入り込めなかったため、冷静に観てしまったため、半分を過ぎない内に大部分の物語が分かってしまった。後半一時間はほぼキャラクターを見るだけに終始し、既に分かってしまった物語をただ追っていっただけ。前半で入り込めないような物語を作ってしまったことは大きな問題だと思う。

 それともう一つ。この作品には決定的に欠けていた部分があった。

 人は死んだ時に、魂の重さの分の21グラムだけ体重が軽くなるという。それをタイトルに据えていたので、私の期待としては、神秘的な部分が強調されるのかと思っていた。最初のジャックやボールの生活を見ていると、それを期待させてくれるのだが、実際はどうだか。人間の思いというものを大切にしすぎたため、その部分が殆ど皆無。「21グラム」というのも、最後のモノローグで語られるだけ。

 私の言う神秘的部分というのは何も難しいことはない。ちょっと信じられないような偶然が起こってみたり、たった一つでも奇跡的な事が起こるだけで充分だった。ストーリーが途中で全部分かってしまった以上、それは絶対来るはずだ思っていた身としては、肩すかしを食った感じ。

 その結果、人間だけしか見る事の出来ない作品となってしまい、それ以外に語れなくなってしまった。それが残念。

 蛇足ながら、映画を評価する際の、私のツボというのは、恐らく“家族を作る”方向性にあるのだと思うのだが、本作のベクトルは全く逆だったのも、入り込めなかった一つの理由なんだろう。子供の扱われ方も何か嫌だったし。

 悪い作品とは思えないし、評価すべき所も多い。単純に私には合わなかっただけだ。

(評価:★3)

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