コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 怪獣大決戦ヤンガリー(1999/韓国)

最大限の賛辞をもって本作品には最低点を進呈しようと思います。「みっつけった化石はほじくるな〜♪」
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 40年近く前になるそうだが、かつて韓国映画の特撮作品として『大怪獣ヨンガリ』というのがあったそうだ。一種の伝説と化したこの作品、いつかは観てみたいと思いつつ、ビデオレンタル店でおかしなタイトルを見つけたのが本作を観るきっかけだった。『ヤンガリー』?で、早速レンタル(「ヤンガリー(YONGGARY)」=「龍(YONG)」+「獣(GARY)」の合成で、韓国の伝説上の怪獣のことを意味し、日本語表記が違うだけで実は同じタイトル)。

 いやあ、なんつーか…

 素晴らしいぜ韓国。

 ここまで馬鹿げた作品を良くも真面目に作れたもんだ。ここまで突き抜けたら最高だよ。

 馬鹿も馬鹿。設定からして馬鹿だし演出も馬鹿。「ありえねー!」連呼しつつ、凄いストレス解消になった。

 ストーリーそのものは、「あ、骨だ」→「怪獣の化石だ!」→「手柄は俺独り占め」→突然のエイリアン襲来→悪人滅ぶ。→怪獣暴れる。→人間対怪獣→「悪いのはエイリアンだ」→エイリアンに攻撃→怪獣回心→新しい怪獣出現→怪獣プロレス→正義の怪獣勝つ→エイリアン滅ぶ。

 フローを書いただけだと、端々に思いっ切り無茶があるものの一応怪獣もののフォーマットに収まってるが、肝心のヤンガリーは世代の若いCGなので合成丸わかり。もの凄く身軽な分重量感が無いが、その辺は全く頓着しない作りになっている。何せ飛んできたミサイルを身をかがめるだけで避けてしまうというのだから、身軽さは折り紙付きだ。そして怪獣が出てきた時の人間の反応が、ほとんどの人間が驚いてるよりは喜んでる。極端なのは園児バスからヤンガリーを見ている子供達で、この空間には危機感ゼロ。みんな手を叩いて喜んでる(ミサイルが飛んできても喜んでる)。更に防衛隊の面々はみんな揃いも揃ってくだらないジョークを連発し、何の手も打たずにヤンガリーを都市部に入れて、そこからおもむろに攻撃してる。町を壊すことを全く頓着しておらず、何人死のうが都市が麻痺しようが、一切お構いなし。明らかにヨンガリー本体よりも人間による破壊の方が甚大なものになってる。戦争状態にあるのに市街地には普通に人が歩いてるし…この世界で朝鮮戦争が再発したらきっと韓国は滅ぶわ。それになんで指揮者が揃いも揃ってアングロサクソンばっかりなんだ?無国籍この上なし。

 で、エイリアンの洗脳が解けてヤンガリーが突然人間の味方になるのはともかく、エイリアンがそこで更なる怪獣サソリゲスを投下…だったら最初からそうすれば問題なかったんじゃないか?…というか、怪獣そのものが必要じゃなかったとしか思えないんだけど。

 ツッコミ放題といわば言えるけど、この馬鹿さ加減がビデオで観る分には大変心地良い。「ありえねえよこんなの」「馬っ鹿でえ」「さすが韓国。やることがひと味違う」「おいおいおい」…一人で観てながら、これほど画面に向かって語りかけた作品は数少ない。

 だから見終わった時、決してこれを時間の無駄だったとか、つまらんもんだったとか、何か私の大切なものが汚されたとか…そうは思わなかった。むしろ何か大切な経験を味わったような、すがすがしい気持ちにさせてくれたのは確かな話…思わなかったんだってば。

 なお、日本のビデオ版のラストソングは大槻ケンヂ率いる特撮によるもんで、その名も「ヤンガリー」(そのままやん)。大槻ケンヂ本人の言によれば、「あまりの出来に絶句し、下手に格好良い曲を歌えば、こちらがボケ役になると判断し、最大限にボケを引き立てるような曲を提供した」とのこと。結果として本編にツッコミを入れるという凄い曲になる。歌詞だって「見つけた化石はほじくるな〜(ヤンガリー、ヤンガリー)。私の妻のように恐ろしい〜(ヤンガリー、ヤンガリー)…水銀コバルトカドミウム〜(ヤンガリー、ヤンガリー)」…そりゃヘドラじゃ!是非一聴をお薦めする。

 決して小さくまとまることなく、突き抜けた作品を作り続けて欲しい。韓国映画の未来に幸大きからんことを!日本じゃ流石に作れなくなってしまった大切な部分をこの映画は教えてくれる。

(評価:★1)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)ミュージカラー★梨音令嬢[*] 荒馬大介[*] 水那岐[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。