この映画の素晴らしい所は決して「成功」にスポットライトを当てているのではなく、人間が夢に向かって闘いながら生き抜くその様を描いたからではないだろうか。ある映画のように最後にノーベル賞を受賞するシーンを誇張して表現するのではなく、青年達が夢に向かってどんな逆境にも耐え抜き闘いつづける様を描いている。ただの感動映画を観終った後に自分の心に強く残らないのは、最も辛く苦しい激闘の日々を一場面としてしか映し出していないからだろう。そんな、私が一番欲していた場面をこの映画は力強く描いてくれたことに感謝したい。

　何よりもこの映画に心打たれたのは、私が父に告げた想いを発してくれたからだ。それは「俺のヒーローは頑固オヤジ」だということ。俺とオヤジは全く違う。だから、常に反発をしてきた。しかし、半人前だがちょっと大きくなって気が付けば頑固で意地っ張りで自分の意志を貫き通す性格は、俺を育ててくれたオヤジそのものだった。そんな想いを、私も去年父に告げたものだった。私が自分の夢を実現させるために幼い頃から育った家を出て一人暮らしを始め、外の世界で自分なりに闘い始めた時に初めて知ったオヤジの重みだった。あんなに反発しつづけたオヤジのあの魂が、俺にそっくりそのまま受け継がれていることを知ったのは、初めて自分が半人前だが外の世界で闘い始めた時だった。だからホーマーが金メダルを受賞した後に父親に告げたあのメッセージは、私が父に告げたあの想いと重なったのだろう。

　そして、そんな頑固親父と夢見がちな子供の間でいつも二人を取り持っていたのはお袋だった。まずいなこれ。明日実家に帰るんだけどまともに会話できるかな。俺泣きそう。

　現在、就職活動を一先ず終え今一度自分の目標を再確認しようと手にとった映画が「遠い空の向こうに」であったという事実を受け止めたぞ！俺には才能なんてないが、この頑固さとタフさを礎にしつこく自分の夢をこの大空にぶち上げてやる。

　20020510