今回のハリポタの魅力は冒険ではなく、謎解きの悦びとどんでん返しの妙。

初作からのキャラクターであるネズミのスキャバーズが、アニメーガスのピーター・ペティグリューだった事、ルーピン先生が実は人狼だった事も意外。

そして、最大のどんでん返しは、シリウス・ブラックが実は無実であり、ハリーの父の友人だった事である。そういう点では原作未読の人にはゲイリー・オールドマン＝悪役という先入観があるから、この結末は意外だろう。配役の妙である。

原作は順を追って謎解きが進むのだが、映画版はいかにせん時間足らずゆえ、原作未読の方には、最後まで展開に振り回される感があって気の毒だと感じた。

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では以下、原作にあって映画版にない謎解き部分について

１．スキャバーズとクルックシャンクスについて・・・

■原作■　ロンのねずみのスキャバーズと新キャラのハーマイオニーのペット猫のクルックシャンクスとの追っかけっこで、ロンはハーマイオニーと冷戦状態になる。ハリポタ・ファンならば、初作からのキャラであるスキャバーズに肩を持ちたくなる。誰もがクルックシャンクスをバカ猫だと思っただろう。実はスキャバーズの正体を見破っていたのだ。クルックシャンクスは賢い猫だったのだ。

■映画■　追っかけっこは一度で、ロンとハーマイオニーは特別険悪な状態にはならない。

２．タイムターナーについて・・・・

■原作■　ハーマイオニーが同じ時間割をかけ持ちしていたのに、ハリーやロンが疑問を抱いている。原作を読んでいるうちは、時間割のかけ持ちに対する謎解きの疑問が読者にもあった。

■映画■　授業中にハーマイオニーが一瞬に現れるというシーン以外にはなく、ラストで唐突にタイムターナー（逆転時計）が出てくる。

３．バックビークの死刑について・・・・

■原作■　妙に印象に残るバックビークの断頭時の音が実は空振りで地面を叩いた事。

■映画■　カボチャに対して振り下ろした音だったが、あっけない。

４．シリウス・ブラックの指名手配書について

■映画■　各所に張られているが、バカ丸出しである。悪役のままで終わっていればあれでもいいが、 どんでん返しを有効にするための仕業。やりすぎです。もっと知的なキャラです。

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さて、この監督が「ハリーポッター・シリーズ」を熟知していない証を述べよう。

１．ホグワーツを山の上に持ってきたは原作への冒涜。ましてやハグリットの小屋が森の入り口ではなく完全に山小屋化している。

２．学年の変わり目は夏休みである。家出したハリーが、白い息を出して佇んでいたり、秋も深まったスタイルである。ましてや、ロンのお父さんはマフラーを捲いていたり、何処へ行っても暖炉に灯がともっている点。作品はディメンターの影響で全体的に冷えた感じもするが、季節感がなさすぎる。

３．ハリーが何としてでも行きたがったホグズミーツの魅力が全然伝わって来ない（ホグズミーツ自体が３年生から行ける事にも触れていない）。

４．最後に新しい箒ファイアーボルトが送られてきたけど、誰から送られてきたのかが不明だし（実はシリウス・ブラックだけど）、超高価だと言うことも語られていない。

５．バタービールの味は原作を読んだ人なら誰もが試したいところ。その味を映像で表現するのは無理だとしても、バタービールすら出てこなかった。アルフォンソ・キュアロンは想像力が無かったんじゃないかと思われる。

ハリポタファンっての熱狂的だから原作の忠実さを損ねるとそっぽ向かれるよ。そういう意味でクリス・コロンバスは適任だったのにね。

例の１日が重要なために、ここを描く為には他をバッサリ切り捨てなければならない。しかし、上記５カ所がないと原作ファンにとってストレスが溜まる。もう１０分の追加で十分に語られるはずだ。この監督、ホントに「ハリーポッター・シリーズ」が好きなんだろうか？

次作はマイク・ニューウェルに監督交代との事。ますますボリュームの増えた「炎のゴブレット」は、原作を読む限り肝心な競技大会自体が魅力を感じないのが難。まぁ、２時間３０分にまとめるのは容易だと思う。

そうそう、ダニエル・ラドクリフ君、『タイタニック』の真似しないでね。