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[コメント] 狼たちの午後(1975/米)

何度鑑賞してもこの隙の無い脚本と、観客を「無責任な傍観者」にさせてくれる演出に堪能させられる。他人が転落していく姿は(安全が確保されてるなら)「楽しい」のだ。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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妻にもゲイの恋人にもアル・パチーノは愛されていなかった。母親もそうだった。彼等はアノ異常な状況下で、彼の「最後の」話に耳を傾ける以前に、自分の主張を喋りまくった。

誰からも愛されていないと気づいた時の絶望感、そこにFBI捜査官からの誘惑の言葉「悪いのは君じゃない、相棒だ。」・・・唯一、自分の身を任せられるのが敵であるはずの警官だったとは皮肉である。結局、彼は誰も頼りにならないと察し、敵を頼りにし、自分自身を愛したのか。

奇妙な連帯感が生まれかけていた人質たちも、逮捕された彼を振り向くことさえせず家路に着くのだろう、彼は孤独を知った。解放された人質たちをぼんやり眺める彼の表情の上手さよ。

また脇を固める役者たちの芝居も記憶に残る。まさに迫真の演技陣がこの隙の無い脚本の完成度を高めていく。佳作ではあるが70年台のベスト10には忘れずに入れておきたい1本である。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ペペロンチーノ[*] torinoshield[*] けにろん[*]

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