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[コメント] 座頭市物語(1962/日)

まだスター勝新が監督の指揮下に収まっていた頃合、よってドラマは厚く脚本は無駄が無い。
sawa:38

悪名』でスターの座を獲得し、本作で役者としての座を固め、『兵隊やくざ』で人間的魅力を炸裂させた勝新太郎

この三大シリーズが同時期に進行していたという事実が未だに信じられない。そのいずれもが後には単なるプログラムピクチャーとして安易で質の悪い作品に転落していくのだが、長期シリーズに発展していくにはそれだけのパワーを持った第1作が必要である。本作はまさしくソレに相応しい面白さがあった。

後の超人たる座頭市のキャラクター造形はまだ控え目であり、重厚なドラマが「主」になっている。後のスター勝新太郎ありきの脚本・撮影にはなっていない。本作は完全に監督三隅研次のモノになっている。だからこそ敵役の天知茂が映え、脇のヤクザたちの哀しく醜い姿が迫ってくる。

反面、盲目の剣の使い手というどう考えても難しい役に挑戦した勝新太郎にしてみたらどうだったのだろう。彼は見事に役を消化し演じきった。だが、役者冥利に尽きる役をこなした彼は座頭市という役柄の奥深さに気づく。後の座頭市が下卑て汚く、金と女と酒、そして狡賢いというように本作から較べてどんどん堕ちていったのは、勝新太郎のあくなき役者の欲求が芝居の難易度を上げさせたからではなかろうか。

座頭市という役柄だけみれば後のキャラに魅力を感じ、初作の本作の座頭市には魅力を感じない。

だが、それを補うに余りある重厚で巧い脚本があった。そんなシリーズ第1作。絶品であろう。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)bravoking ぽんしゅう[*] ジェリー[*]

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