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[コメント] 桃さんのしあわせ(2011/中国=香港)

主題ではないにも関わらず、これほど「食べる」という行為が雄弁な映画も稀だろう。淡々としたカメラ回しの中の様々な所為が、家族とは作り上げていくものなのだと訴えている。お見事。
るぱぱ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭の豪華な食事と病院で逡巡しながら取るデリバリー食との対比。

来し方を想わせる手の込んだタンの煮込み。

老人ホームで雀卓で食べるブドウは居場所を確保した甘さだし、寂しい新年に豆菓子を食べるチョイ主任は家族のことを尋ねられて黙りこむ。

仲間が土産のスープに群がるのは空腹なのではなく、別のものに飢えているからなのだ。

自身は粗末な食事しかしてこなかった桃さんに「ガチョウのローストが食べたい」と言われたロジャーの心中はいかばかりだったか。それを顔を拭ったティッシュを捨てに行き、戻るという行為で「溜めた」手腕には唸らされる。

桃さんの作る料理のように、細部まで丁寧に、丁寧に作られた、愛情に満ちた映画だと思う。

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追記)

と、思ったんだけど「ガチョウのロースト」じゃなかった…? なんか「凉粉」→ところてん状の夏のおやつって話もあるんだけど、記憶違いかなぁ。

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さらに追記)

「ガチョウのロースト」であることを確認。検索するとこのシーンには中国語字幕で「凉粉」と表記がある。原語を耳で聞き取れないのでどちらが正しいのか判断しようがないが、そのどちらであるかによって、ロジャーを見つめ続ける桃さんの表現するところは大きく変わる。この場合、ガチョウとトコロテンでは慎ましさの意味が違うのだ。字幕に意訳はつきもので、文句を言っても始まらないが、ここは是非とも白黒つけていただきたいところだと思う。どちらにせよ、どちらかの訳者が監督に殴られるのは必至。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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