[コメント] PERFECT DAYS(2023/日=独)
孤独を「強さ」に変えてしまった男を描いて秀逸なのに何も心に響いてこない。あの変な形や色をした公共トイレのせいだろうか。視覚的に主人公と対等に扱われる日常の中の「非日常的異物」は物語からリアルさを奪ったうえファンタジーとしての昇華も妨げていないか。
公衆便所(渋谷区では公共トイレと呼ぶらしい)に対して滅私的に男が奉仕するのは、男が無意識のうちにその行為に社会との唯一の接点を見いだしているからだと、私は思いました。それにしては、このアート作品然とした公共の象徴物に、私は社会(人の営みの集積)をまったく感じませんでした。
だからこの男(役所広司)の「強さ」は、どこか生命感が希薄で社会と接点を結んでいるようでいて、ふわふわと東京の中空を漂っているように見えました。きっとこれはヴィム・ベンダースの本意じゃないでしょうね。あっ、『ベルリン・天使の詩』か?
そのことを除けば、良くも悪くもベンダースが抱く「東京とニッポン人の精神性」の視覚化として"それらしく"良くできた映画だと思いました。
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