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[コメント] 逃げきれた夢(2022/日)

黒澤の『生きる』にはドラマがあった。残りの人生を成すすべなく「生きなければならい」この男(光石研)は成すすべなく周囲と向き合ってみるが、そこには「今さらの申し出に戸惑う家族」「遠い思い出でしかない旧知」「職業の結果としての教え子たち」がいるだけだ。
ぽんしゅう

二ノ宮隆太郎の律儀なカメラの切り替えし演出は、男が向き合った「そんな関係」を男の視線として私(観客)に提示する。そして切り返されたショットは、私(観客)に曖昧な表情を浮かべる男の姿を見せつける。人生の半ばを過ぎた者にとって、かけがえのないものとは実はその程度のものなのかもしれない。そんなことを考えた。

飲み屋の女将さん役で岡本麗が出ている。男(光石)との久しぶりの再会を懐かしみ心底喜ぶ役だ。庶民的な愛想の良さのなかに上品さが滲むいい老けぐあいだった。岡本も福岡の出身で、45年前に光石が16歳で主役に抜擢されたデビュー作『博多っ子純情』に出ていたのを思い出した。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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