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[コメント] 焼肉ドラゴン(2018/日)

同じ阪神間が舞台の姉妹物語『細雪』が頭をよぎっていた。時代や生活背景は違えども距離は僅か10数キロ。芦屋の山の手の名家と、伊丹の河原ぎわの朝鮮部落。見えない制度や身分の枷の下、家のしがらみや行く末に悩み、恋慕に迷うこの三姉妹も“自立”に揺れる。
ぽんしゅう

境遇の高と低。富と貧。陽と陰。そんなものがどでうあれ、人は悩み葛藤し選択しながら生きなければならないのだ。

もちろん、この家族の不自由さの発端は、故国(=アイデンティティ)を捨てざるを得ず、新たな故国を自らの力で築かなければならないという境遇にあるのだが、彼らは不自由を脱するための解を故国を超越した“自立”に求めようと試みる。その解は、完全な正解ではないかもしれないが、まったくの不正解でもないかもしれない。

置かれた境遇のいかんに関わらず、社会や家族よりも個人が「自分が幸福だ」と考える道を自ら選択すること。それ以外に、人が前に進む方法はないとう「生きることの普遍」を、家財道具を満載した龍吉(キム・サンホ)と英順(イ・ジョンウン)夫婦のリヤカーの旅立ちが語ってた。

自らの劇作を脚本化し映画にした鄭義信の初監督作だか、話の展開に溜めがなく感情が直截的に露出してゴツゴツとした印象だった。それが味といえば味だが、一歩引いて「思い」を観客にゆだねるシーンが少なく繊細な感情が伝わってこなかった。この感情のゴリ押しにはいささか疲れました。

鄭義信さんにとって大切な原作なのは分かりますが、話の構成や展開にどこか舞台のぶつ切り羅列感が残っていて、在日としての社会的な一家のありようと、個々人のホームドラマとして物語のアヤが噛み合わず、映画としての訴求力が削がれてしまっているように感じました。

脚本は、第三者と組むか任せてしまうぐらい思い切って、根本から映画用に翻案した方が物語のに秘められた普遍的なテーマがきわだのでは、などと素人が“偉そう”に勝手なことを書いてしまいました。鄭義信さん、ご無礼をご容赦ください。

(評価:★3)

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