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[コメント] さよなら渓谷(2013/日)

女にとって男は忘れ去りたい存在でありながら、男が抱え込んだ悔悟の苦痛は絶対に忘れさせたくないという矛盾。死んで詫びることが男にとって救いになってしまうことを、男もまた知っている。負の磁場が生む幸福になろうとなど思っていない男と女の無限スパイラル。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







世間からスポイルされた女に居場所はない。女のそばに寄り添おうとする男は、女にとって最も忌むべき男だ。それでも、女は底なしの孤独に耐えきれず、罪へのつぐないという大儀を借りて、その居場所のない男とともに居場所をつくる。

しかし、女は相手の男が「あの男」である限り、その癒しが完全な解放につながらないことを知っている。男もまた、自分が「あの女」の相手である限り女は真の幸福を得られないことを知っている。そんないびつな居場所でも、心と肉体の接近は女と男の間に「愛」のようなものを生んでしまう。そこに見えるのは、人間の究極の性(さが)だ。

幸福になりそうだったからという理由で、女は男のもとを去った。男もそれに気づいていたという。矛盾と孤立を描き続ける大森立嗣らしい、きつい恋愛映画だ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)おーい粗茶[*] セント[*] けにろん[*]

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