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[コメント] 壬生義士伝(2002/日)

新撰組という最高にドラマティックな舞台。そしてこの二人を迎えてどうしてこんな映画になるんだろうか。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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と、言いつつも確かに如何にも中井貴一佐藤浩市らしい直線上にはある。その上での失敗だから、どうしようも無かった(映画自体が無理だった)のか、演出が酷かったかのどっちかだ。

中井貴一は、私のお気に入りの役者であるが、どうも作品に恵まれない。佐藤浩市や真田広之が当たっているというのに。というか中井自身にもその責任がありそう。人間味に溢れ好感度は傑出しているのだが、演技が妙に大仰なのだ。

さてこの映画、同年に米アカデミー賞を獲った …もといノミネートした『たそがれ清兵衛』があり、その作品も幕末期の侍を描いていた。また2004年のNHK大河ドラマが「新選組!」であったので(尚且つそっちでは堺 雅人山南敬助、佐藤浩市が芹沢 鴨!!!)、当然この作品も或る程度世間の耳目を惹いた筈であったが、実際には殆どスルーされてしまったようだ。 かく言う私も全く観る気がしなかった。だって中井貴一が新撰組の義士を演じると聞いても目新しさは何も無い。これが役所広司であれば、予想の範疇であっても観たい気もする。また中井であっても例えば斬って斬って斬りまくる、かの斎藤一も制禦不能な狂気の隊士を演るというなら多少は興味も惹くが(その点、NHK「義経」での頼朝は、「武田信玄」以来の当たり役であった)。矢張りこれ以上の何かがないとどうしようもない。当時は「誰だか知らんが監督は対抗馬がオスカーにノミネートして却って迷惑してんじゃないのかね」とは思っていた。

今回、佐藤浩市の驀進と「風のガーデン」(中井主演・緒形拳助演/フジTV)観賞完了を期に、監督は気にせず手に取って視てみたが、矢張り凡愚な出来であった。僅かに目を惹いたのは冒頭の隊士募集の際のクレーン撮影で長回しの殺陣をやっていた所(しかし外連味に溢れるそのシーンに余り必要性は感じない)。何だかなぁと思ったのは佐藤と中谷の濡れ場と、息子たちが水盃で別れを惜しむ場面で間に立っている妹の間抜けな構図が続く所。

音楽が久石 譲なのがまたいけない。宮崎駿とタケシで「久石印」は確立されたが、その後の彼の音楽は匂いがキツくなった。正直、本来こうなった彼の音楽に合う映画は多くはないと思う。

ええい、この際もう一言言うと、主演の二人の存在感はいいとして、他の助演が全然生きていない。それは演出の意図なのか? 唯一役者の個性で踏みとどまっていたのは(いいか悪いか別にしても)三宅裕司。「息子たち」もそうだが中谷美紀はおろか重要な筈の夏川結衣も全然「生きた人物」に見えなかった。

でこの後、この監督はいい映画撮るようになったのかね?

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] 水那岐[*]

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