主人公の造形はいいとして、悪役衆を現実に寄せ過ぎてパッとしない。現実に寄せるアプローチ自体はアリだと思うのだが、現実にも強烈なキャラはいるからね。リドラーのビジュアルが最も残念だった。

そのリドラー、謎掛けがゾディアック地味て作品も探偵モノの薫りを放つが、どうにもミステリーが結実してない。社会への捻じ曲がった怨恨となると、現代的過ぎてハメットにはならないとは思うが、残念。

水害シーンはインドネシアや東日本の震災が無ければ無かった描写であり、津波の光景が世界全体にも深い爪痕を残している事を実感する。そして集会場への階上からの射撃も、モスクワやパリの劇場を襲ったテロを想起しない訳にはいかない。現在、ウクライナでテロにも勝る侵略が行われており、厳しい現実に陰鬱な映画で対抗できるのかと、ブルース=ウェイン同様考えた。

(2022.03 イオンシネマ板橋にて鑑賞)