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[コメント] 笛吹川(1960/日)

橋と川のもつ映画的効果を最大限に活かした作品。川のほとりの古いあばら家や、この家にまがまがしいものを持ち来る橋などの舞台設定はとても秀逸。川の土手をスクリーンの右端から左端まで走っている若者をキャメラで遠くから捉えた場面は気が遠くなるような映画的美しさに満ちる。しかし、
ジェリー

この映画は映画かもしれないが「劇」映画ではない。劇映画を無節操にも乗り越えようとした映画の残骸である。一人の人物をしっかり見据え続けること、個から普遍に通り抜けること、そこにしか、劇映画が劇映画である土俵は作れないと今のところ私は信じている。そこを無視するというにとどまらず、普遍を叙述して普遍を説明しようとする、つまり、説明に説明をくどくどと重ねただけのベタな前半部はあまりに痛々しい。原作の小説の効果と、映画の本質から来る限界との測り違えがあるように思えてならない。

ただ、どんなに出来栄えが悪くとも、木下惠介の刻印がしっかり押された作品であることは請合う。その意味でプラス1点を加えた。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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