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[コメント] 間宮兄弟(2006/日)

「創造」とはこういうことを言うのだろう。間宮兄弟の、この人物の造形。言葉で説明しずらい、それこそ「2時間の映画にでもするから、そこから雰囲気を感じてよ」、とでも言うしかないようなそれをイメージしたっていうのが凄い。
おーい粗茶

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「これこれこういう感じで」っていう指標がほとんどないだろうに(まあ、強いてあげれば原作の持つ雰囲気なのだろうが)、間宮兄弟ワールドを破綻なく一貫して作ってしまった、監督、主演二人にはとにかく感心。この作品、「間宮兄弟」が描けてなかったら作品として存在できないと思うので、ほんとうに凄い仕事だと思う。脇の女性陣、常盤貴子、沢尻エリカ、北川景子、そして戸田菜穂が兄弟に光を当てる役割をきっちりこなしていて、こちらもみな素晴らしい。

私は子供のころ、「ひとり間宮兄弟」だったです。一人になって考え事をしたりする時の頭の中は大抵「対話形式」だったんです。「おまえあれどうするつもり?」「どうするもこうするもああするしかないじゃん」「まてまて、やけになるな」とか。これって案外みんなそうだったんじゃないですかね?

間宮兄弟の兄弟間の関係って、あえて簡単に言ってしまえば、自分の分身との引き籠もり、っていうことじゃないかと思う。引き籠もりというかお籠もりか(関係ないけど「男の書斎」とかっていうのと、「引き籠り」っていうの、言葉のイメージほどの格差はなかったりして)。あの一人で心往くまで自分の時間を楽しむ感覚。あれがもし誰かと共有できるとしたらどんな感じなんだろう、というのが間宮兄弟なんじゃないかと思う。

人間同士、気があって、相互に理解しあえて、何でも打ち明けられて、という関係が構築できれば、親友でも恋人でも夫婦でも、それぞれ相応にああいう関係に近づくことができるかも知れないけど、でも決して間宮兄弟のような関係は手にはできないだろう。でもそうやって、兄弟のそういうような関係を見て羨ましいな、と思う経験というのは大切なことなんだと思う。人は、実際に目で見た物から触発されるものだから。逆に見たこともないものを望むことは難しい。だから私たちはあの姉妹のようであればいい。あの姉妹が感じた幸福感を体感できればいいのだと思う。

「もう2人で歩くなんてこともないんだろうね」「そんなことないよ、間宮兄弟なんて今でも一緒に遊んでるじゃない」と言って、ハリセンで頭をたたきあう姉妹を公園の噴水ごしに映すショット。なんで姉貴までハリセン持ってんだよ、という嘘をまったく感じさせない地平にまで観客をいざなう、もう映画でしか表現できない世界。『家族ゲーム』のラストシーンのような永遠性を感じた。

(評価:★5)

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