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[コメント] 間宮兄弟(2006/日)

敢えて言おう、『電車男』は裏切り者の物語だ。我らオタクにとってもっとも親密な朋友、そして我らの実像こそが『間宮兄弟』なのだと。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







自分が『電車男』でオタクを非難するようなコメントを記したということで、あるコメンテーターの方から失望の色を顕わにされたことがあった。だが、その時は彼に明確な弁明をすることができなかった。済まない、という気分だけが残ったものだ。でも、今ならちゃんと言える。『電車男』は銀幕上に描かれた夢の体現だ。我々のための映画は、はっきりとこの『間宮兄弟』なのだと。

間宮兄弟は自分たちなりに、人生を楽しむ術を知っている。だからいつも退屈することはないし、普通の狡猾な大人たちとは違う次元で、女の子を楽しませることもできる。友達に持つなら、こんなに友情に篤い奴らもいないだろう。…そう、友達としては、だ。

そこでそれ以上の関係を持とうということは、よっぽど演技の腕を磨いてからにすべきなのだ。サーカスのピエロは人気者になり得るが、主役を勤める二枚目に取って代わることはできない。それはサーカスの美女のみならず、ピエロ自身をも不幸にしてしまう行為だからだ。ビデオ屋店員の妹である北川景子は、無責任な立場から不器用な彼らを応援するが、それとて「友達の立場から」なのだ。もっと言えば、義憤にかられて兄の同僚に離婚されかけている戸田菜穂に尽くそうとした弟は、彼女から厳しく跳ね除けられる。オタクがオタクであることを貫き、それを人生の中心に据えるということは、彼にとってイバラの道なのだ。

だが、それでもいいじゃないかと自分は思う。夢と女を秤にかけて、夢を敢えて握った男の花道はちゃんとある。その姿は美しいとは言えないかもしれないが、充分に満足できる人生のカタチであることは自分が保証する(俺に保証されても何の気休めにもならないだろうが…)。

何よりも、森田芳光は軽いタッチながらも大きな共感をもってこの人生を描いている。その気持ちを大切にしよう。母・中島みゆきだってふたりを心配していないじゃないか、ふたりの彼女の不在を除いては。

自分の目のなかでは、兄弟はちゃんと明るく輝いていたよ。

(評価:★5)

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