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[コメント] ピアノ・レッスン(1993/豪=ニュージーランド=仏)

この作品で語られるのは「感情」ではなく「感覚」のみ。この監督が追求するのは「物語」ではなく「表現」のみ。監督の悦に入った表情が目に浮かぶ。
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つまり、「表現されるもの」にはそれほど関心なく「表現すること」それ自体に監督は熱中している、と。

更に、「愛」とか、「性」とか、それに付随する物語なんて、この監督にとっちゃあどうでもよくって、単なる「表現のための道具」「表現のための表現」に過ぎない、と言い切ってしまおう。

「それじゃあ、ホリー・ハンターの名演技はどうなるのよ?」とツッコまれそうだが、あれは決して監督の演出力の賜物ではなく、ハンター自身の思い入れ・役柄への情熱・女優魂の表出が、ある意味偶然に、カンピオンの表現形式とナルシスティックな美的感覚表れる画に、ピタリとハマったんだろう。

アンナ・パキンのオスカー受賞も、あれは演技力云々ではなく、浜辺の天使のダンスの画があまりにも美しかったから。

マイケル・ナイマンの音楽も然り。

そういう意味で、この映画の成立は、奇跡的かもしれない。

余談ながら、原作がありヘタに物語性のある『ある貴婦人の肖像』なんかは、手に余ってしまって、コケッってな感じになってしまうんだと思う。

もうひとつ余談ながら、配給のフランス映画社の社長か重役の方が、亡くなられる前にこの映画を見て「『ピアノ』だけじゃインパクトもないし、内容が伝わりにくい」ということで、この邦題を付けられたそうだが、「レッスン」は絶対要らない!だって、カンピオン監督が描きたかったのは、「ピアノのレッスン、それに纏わる男女の愛憎劇」なんて内面性は二の次で、「ピアノそのもの」、彼女の感性にビビビとくる「ピアノのある美しい風景」なんだから。『ザ・ピアノ』だけで良かったハズ。

こう書くとまるで悪評みたいだが、映画館で一回、TVで一回、二度見たが、僕も監督と共に一緒に「ウットリおナル的」悦に入れたので4点。

(評価:★4)

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