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[コメント] また逢う日まで(1950/日)

戦争で何が奪われたか。戦争で何が失われたか。端的に言うと、それを取り戻すことは出来ないけれど、想いを致す、作品で。♪チャッチャッチャラーララン!
G31

 今風にタイトルをつければ『君(たち)を忘れない』てな感じの作品だ。大切なものを突然奪われたり、二度と取り戻せないものを失ったりという体験は、平時においてもあるものだけど、この時代は、戦争がそれを国民にとっての共有体験にしていた、という背景がまずある。そして、この時代の観客には、こうして映画を見ている自分たちが、生き残ったものである、生き延びたものである、という意識があったと思う。生き延びた自分たちにできること、それはまあ、毎日を生き抜くのに精一杯、子孫へ遺す社会を築くのに必死だったろうから、24時間四六時中というわけにはいかないだろうが、散っていった彼ら、亡くなった彼女たちを、記憶し続ける、決して忘れない、想いを馳せる―――心情のそういう部分へこの映画は共振したんじゃないか。

 おそらくそのために、岡田英次の凡庸さが必要だったのだ。河野秋武の軍人的な勇ましさではなく、レコードを聞き、友と語らい、恋に現を抜かすという、どの時代・いかなる環境において存在していても不思議のない、普遍的な凡庸さが。なぜなら、戦争は、そういったもの(心情の持ち主)をも、すべて等しく奪っていったから。

 で、タイトルが『また逢う日まで』であるということは、要するに、今この世に生を受けている者は、いつか必ず彼らに会える。それだけは100%確実なわけだ。だから、そんときまた逢おう、それまでな、ということだ。

 ちなみにこの映画での久我美子の印象はとてもいい。

80/100(07/08/19記)

(評価:★4)

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