これ、男の妄想ですね。確かにフォーニア（ニコール・キッドマン）みたいな若くて美しい女が、角を曲がると股を開いて待っていてくれるのであれば、男としてこんな有り難いことはないです。私だったら、手を合わせて拝んじゃうかもしれません。でも、こんな女いません。過去のトラウマだけ持っていて、現在の日常生活を持たない女なんて、いませんよ。両親も祖父母も親戚もなく、近くにも遠くにも友人がおらず、（自分以外に）親しく口を聞く男もいない女なんて。

　いんですよ妄想は妄想で。映画ってある意味妄想を開放する場だから。自分の好きな妄想だけ褒めて、嫌いな妄想をけなすのではアンフェアだしね。ただね、こいつ（コールマン＝アンソニー・ホプキンス）、いい気になってるでしょ。ゲイリー・シニーズに向かって、「君みたいな森の奥に引き篭もる男と、俺は違うんだ」みたいなことを言ってます。つまり、だから「君」には女ができないのに、「俺」にはできたんだ、と言ってるわけ。

　違うでしょと。これは妄想なんだからさ。妄想だから女ができたのに、それを自慢してみせたって、意味ない、じゃない。ってか馬鹿だよバカ。あの、妄想の正しい描き方ってのは、「万が一私の妄想が実現し、女性が私に振り向いてくれたなら、私はこんなにも女性を大切にし、こんなにも女性に幸せを与えます」って選挙公約みたいなもんじゃなきゃいけない。ニコールみたいな女が自分の女になるなんて、宝くじに当たったようなもんなんだからさ、周りの目なんか気にせず、脇目も振らずにニコールの為に尽くしてやるべきなんだよ。人に自慢なんかしてる場合じゃない。そもそも妄想なんだから。脳みそ弱すぎ。

　えー、どうも皆さん騙されてるみたいだけど、これ、コメントするのも馬鹿馬鹿しいくらいくだらない映画ですよ。この親爺、「バイアグラ」なんてものさえなければ、老後は高尚な文学談義に身を捧ぐつもりだったとか何とか殊勝なこと言ってたけど、ちょっと待てと。最初にフォーニアの部屋に上がったとき、どうだったんだと。うまくいったのかと。だったらお前、バイアグラ持ち歩いてたんじゃねーか。チャンスとあらば、と、日々虎視眈々と機会を窺がってたんじゃねーか。単なるスケベ親爺じゃねーか、かっこつけんな！　・・・と思いませんか？

　あと、人種差別に関する問題意識が、倫理的にものすごーく間違ってますね。あえて書く気も起きません。皆さん、自分で考えみてくださいね。

65／100（2004/07/03見）