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[コメント] 離愁(1973/仏=伊)

ラスト15分、何がどうなるのか全く読めない怒涛の展開と、痛切な余韻。戦争メロドラマの名作。
緑雨

映画の大半は、汽車での逃避行のシーンで構成される。フランスの田園風景を、時に足止めを余儀なくされながら、汽車はひたすら走る。長閑な田園も突如敵機の爆撃に襲われ、つい一瞬前まで笑いあっていた生命が喪われる。昨日までの平和な日常生活を奪われた、見ず知らずの人々の運命が、たまたま同じ貨車に乗り合わせたことで交錯する。このシチュエーションが、切実に胸に迫る。

愛する身重の妻と娘がありながら、不貞に走る感情を止められない男を詰るのは容易いが、この異常なシチュエーションに身を置けば、何がどうなっても仕方ないとも思えてくる。常識が揺さぶられる感覚が、恐ろしさを相乗する。そこに説得力をもたらすのが、ロミー・シュナイダーの独特の魅力。力強い生命力を湛えた眼差しと、目を離せなくなる色気。唯一無二の存在感。

(評価:★5)

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