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[コメント] ビューティフル・マインド(2001/米)

数学者が主人公だけに、極めて理詰めな作品。本当に私は最近のオスカー受賞作とは相性が悪い。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 ナッシュの提唱した「ゲームの理論」のことは既に知っていたし、その生活のこともある程度の知識があった。ただ彼についての話の大半は碌でもない話ばかり(傍若無人な振る舞い、性的な乱れた生活、精神病…それ故にノーベル賞も史上最低の得票数で決まったとか(しかし、ノーベル賞選考は秘密で行われるはずだから、こんな噂が流れる自体おかしいとは言えるが))。しかもこの映画を巡って、彼の家族が裁判を起こしたという話もあった。

 それにここ近年、オスカー受賞作品とはどうも相性が悪い。昨年の『グラディエーター』も一昨年の『アメリカン・ビューティー』も好きな作品じゃないし。

 やや不安な思いを抱えつつも劇場へ。

 映画の出来としては良かったと思う。二時間を超える時間を飽きさせないで作ったのは評価するし、ラッセル=クロウの演技はますます幅広くなった感じ。久々に見たジェニファー=コネリーも、大人の女性になっていたし、昔とは違った魅力を見せていた。それにエド=ハリスのアクセントはやはり名人芸。CGもさりげない使い方で好感が持てる。

 だけど、私の知っているナッシュ像とはえらく違った感じ。簡単に言うと、スマートすぎ。確かに彼は精神病なのかも知れないけど、あんなもんじゃなかったはず。それに全然彼の身勝手さが出ていない。私の知ってる限りの知識では、あんなに優しい人物ではなかったはずだが?

 それに彼の精神分裂の表し方も何となく釈然としない。幻覚が見えるのは良しとしても、それであんな風にはならない。もっと何というか、自分のことで頭がいっぱいになって、身だしなみや格好、それに表情などが崩れていくものだ。(人の顔と言うのは、それなりに緊張感があるから整っているものだが、精神的な危機にあるとその緊張感が無くなってしまうので、表情が無くなってしまい、みょうにのっぺりとした顔になる。大体それが演技なのか、本当に精神を病んでいるのかは顔を見ればある程度分かるものだ…でも、この映画でそこまでやるわけにはいかないか)

 あと、ふと思ったが先日観た『シッピング・ニュース』は同じように淡々と時が流れる話だったが、これが私にとっては紛れもない傑作だった。それに対し、こちらで乗り切れない思いがしたのは、結局“神秘的な部分”の有無だったのかもしれない。

 理詰めであっても、人の生活で最後にアクセントを付けてくれるのは、何か不思議な、こう言って良ければ“霊的”なものじゃないかな?

 『シッピング・ニュース』では最後まで解けない謎や神秘的な雰囲気に溢れていたが、本作ではそれを「精神病」と断定してしまって、それに対する克服なり、融和が出来ずに終わってしまっている。数学者を題材にしたからって訳でも無かろうが、非常に理詰めな映画だった。これほどの理詰めな作品を何で“マインド”なんて心の問題みたく言うのが、かえって理解できない。

 結局この作品、私を快楽の極みに押し上げることは出来なかった。こんな醒めた目で映画を観るなんて、少々不本意ではあるのだけど…

(評価:★3)

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