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[コメント] 天空の城ラピュタ(1986/日)

「ぅあぁがぁれえぇぇぇぇぇ・・・!(平均点)」 (レビューは今更感満々のシビレポイントと極私的ネタ)僅かに追記。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







<シビレポイント1 「台詞じゃなく表情で語れ」>

パズー「ぅあぁがぁれえぇぇぇぇぇ・・・!」直後、息を吹き返したドーラの「面白い。愉しませてくれるじゃないのさ・・・!」的な表情。口角片方だけ上げて笑ってるよ!台詞で語らないのにこの婆さんが無数の修羅場をくぐった歴戦の英傑であることが想像され、飛躍的に魅力が増すのです。一瞬で、無言で。表情で語らせる。これは明らかなる巧さです。

<シビレポイント2 「・・・っく、特務の青二才が・・・っ!」>

この台詞でムスカが恐らく諜報、暗殺を主とする任務につく男であり、年長者に疎まれるほどデキるヤバい奴だということが一瞬で分かります。一瞬で。わずかな台詞ですが、しかしこれは決して説明不足ではないのです。この匙加減の重要さは映画一般に共通することなのです。最近の御大はそれを忘れてしまったようですが。

<シビレポイント3 「当直の兵、数名が重傷です・・・!」>

ムスカは黒眼鏡とわずか三人で当直の兵を闇のうちに葬り、無線を破壊した模様です。シーンとしてはこれを説明しません。観る者の想像に委ねているのです。終盤にさしかかってもなお、ムスカが実体よりとことんヤバい奴だという妄想を観る者の中で肥大化させるのです。この恐怖感はまさに『エイリアン』の成功要因と同義なのです。

<シビレポイント4 「追随しないカメラ」>

墜落寸前で持ちこたえ、湖面ギリギリで疾駆するフラップター。この速さを、カメラが捉えきれてないんですねえ・・・どんだけ速いんだ、という。このスリル感、疾走感。アニメでこれをやるというのは明らかにその効果を意識しているわけです。カメラワークは間違いなく「表現」の要素なのです。アニメでこれをやるのは、私の知る限り、この20年以上先、実に押井守の『スカイクロラ』まで待たなければならないのです。

<シビレポイント5 「モノで語れ:パズーの迷いを断つ短刀」>

パズーの縛めを断ち切るドーラの短剣をアップで撮りますよね。あの瞬間に短剣が輝きを放って閃くのですが、このカットがいいんだ・・・!あれはパズーの迷いも断ちきっているのですね。モノで語らせる。明らかなる巧さです。

<シビレポイント6 「説教は観る者の中に・・・」>

御大は説教の人ですが、この作品は説教が先行しません。ラストはいささか説教臭いため、『カリオストロの城』をこの要素においては超えることが出来ませんが、最後まで抑えた努力は明らかです。説教:アクション=1.5:8.5。御大にはいい塩梅だと思います。

<シビレポイント7 「BGM」>

飛行石覚醒からロボット起動、シールド破壊、ムスカ「素晴らしい・・・!」まで、実にBGMは沈黙しているのです。無意味に壮大なオーケストレーションの久石楽曲が全編にわたってダダ漏れになっている近作と違い、ここぞというところでテーマが明確で印象的な曲を使ってきます。それは『ナウシカ』におけるアスベルのトルメキア艦隊襲撃→アスベル墜落→腐海突入までBGMが沈黙していたのと同じシチュエーションです。破壊のイメージが生きるんですよ。明らかなる巧さです。

<シビレポイント8 「滞空状態のゴリアテ」>

あんな重量感のある空中戦艦が要塞の尖塔に船首を突き立てて「ズズン・・・!」なんて平気で滞空してますが、いくら飛行技術が発達しているからといって、そんな馬鹿な・・・とは思わせないのです。だって既に没入しているんですから。別のリアルが存在するこの世界に。

<シビレポイント9「寺田農」>

クールなデキる男然とした素敵な素敵なムスカ様の輪をかけて素敵な人格崩壊シークエンスはもちろん、寺田農の興奮して裏返った声が支えています。根津甚八を充てるという案もあったようで、『パトレイバー2』のツゲ・ユキヒトの演じ振りを目の当たりにした身としては、彼が演じたらどうなったか妄想せざるを得ませんが、やはり寺田さんでしょう。会心のキャスティングです。

<シビレポイント10 「とにかくうまそう」>

御大は常日頃から食べるシーンはキャラに命を吹き込むんだとこだわりを見せていますが、説教と密接に結びつく近作のあざとさと無縁な本作の食事シーンはとにかく「うまそう」という感想に尽き、キャラ同士が心をつなぐシーンに重要な役割を果たしています。

「何しろ時間がなくてよ」、いくら語っても語りきれないのです。ただこの「素晴らしい・・・!」面白さはあらゆる巧さが支えていると。とにかく伝えておきたいのです。

<極私的な話>

奥さんと結婚することになって新居を探し回っている時、物件のドアの前で

「愛の巣だぁ!」

「愛の巣!?これが・・・!」

「ドゥダドゥダドゥダドゥダゥア〜ン(BGM)」※声真似付

とかけあうのが決まりになっていました。明らかな馬鹿です。馬鹿で恥ずかしいとは思っていませんが。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)シーチキン[*] 緑雨[*]

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