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[コメント] 浮き雲(1996/フィンランド)

現実はもっと厳しいものかもしれないが、カウリスマキは独特の描写から"前向き精神"をほのかに感じさせ、心を暖める。
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 説明描写が極端に少なく、台詞も極端に少ない。それなのに、すごくわかりやすく描写できているのが驚き。夫のラウリがリストラを告げられるシーンをカード1枚で表現する見せ方は巧い。3という微妙な数字を見せるだけで、失業がわかる。サイレント映画を撮るカウリスマキならではの演出に思えた。

 1シーン1シーンもすごく平面的で絵画のようなカットが多い。アパートやレストランなどセット美術もそれに合っている。その構図も面白かった。

 イロナとラウリの2人の描写はとことん掘り下げて描いているわけではない。なので、職探しをしているシーンを見ても、少なからずそんに甘くはないだろう、という疑問が残る。最後まで2人とも失業から光をつかめないでいたように、悲劇的な状況にいるわりには、そこからの痛みがドシっと伝わっては来ない。

 だが、ラストシーンでようやくこれからに繋がるかもしれない一歩を踏み出し、レストランの外で空を見ながら2人で寄り添うシーンを見ると、そんなに簡単なものではないことはわかるのだが、それでもすごく嬉しい気持ちがこみ上げる。「短い人生楽しまなきゃ」「人生は一度きり」「まだ明日がある」などの台詞が何気なく使われていることを思い出すと、人生は前向きに生きないと!というポジティブなメッセージがこの映画の一番の伝えたいことなのがよくわかる。他のコメンテータの方の指摘にあったが、フランク・キャプラのような理想主義がこの映画にあるのかもしれない。

 ラストシーンでちょっと"いい気分"になる映画だ。 

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)KEI[*] ジョニー・でぶ ガブリエルアン・カットグラ[*] ジャイアント白田 けにろん[*]

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