[コメント] ジョニーは戦場へ行った(1971/米)
黒画面から溶明するとモノクロで、3人の医師の仰角ショットが繋がれる。いいオープニングだと思う。現在の時間軸、主に病室内はモノクロ。回想(フラッシュバック)及び夢(夢想)はカラー。これは今見ると、よくあるパターンだが、良い選択だろう。最初のフラッシュバックは、恋人カリーン−キャシー・フィールズとの場面。カリーンの父親はチャールズ・マックグローだ。主人公ジョー(ジョニーではない)−ティモシー・ボトムズと娘との同衾を許す(というか促す)。そういう人もいたのだろう。カリーンの裸の後ろ姿。こゝは、白い靄がかかったような軟調の画面で統一されている。
キリストと呼ばれるドナルド・サザーランドも面白い。『M★A★S★H』や『戦略大作戦』の頃(翌年ぐらい)のサザーランドだ。キャラクターには含意があるだろう。彼は2回出てくるが、2回ともジョーの夢想だ。2回目では身体の状況について会話する。しかし最初の登場場面での、汽車の窓から体を出して、叫ぶサザーランドのショットはいい。
ただし、全般的に云って、回想及び夢の画面造型は概ねイマイチだと感じた。ジョーの父親−ジェイソン・ロバーズ、母親−マーシャ・ハント、あとマックグローというミドルエイジの配役はいいが。中でもロバーズの出番が多く、いつもの彼の雰囲気で、映画に鷹揚さが出る。また、カーニバルの見世物イメージの夢想シーンは(ラスト近くのフラッシュバック含めて)面白いと思う。
クライマックスは、メリークリスマスの場面だろうが、続く夢の中で、ロバーズが電信の話を持ち出し、ラストに流れ込むという怒涛の展開も良く出来ているところだ。ベッドからゆっくりと後退移動するショット。そこにかぶさる痛切なモノローグの繰り返し。
しかし、私は、このモノローグの多用、全体的にモノローグに頼った見せ方は映画としてどうかと思う。ボトムスの声の演技も過剰な場面が多い(ラストは違うが)。モノローグの量を三分の一ぐらいにするとか、さらにインタータイトル(挿入字幕)だけで出すとか、もう少し工夫しても良かったのではないか、というのが私の感覚だ。
#主人公はジョーであり、ジョニーではない。原題の「Johnny Got His Gun」は「Johnny Get Your Gun」(命令形の文)という第一次大戦時のスローガンのもじり。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (2 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。