[コメント] ヴァンパイア・最期の聖戦(1998/米)
冒頭のシーンから漂う乾いた男くささ。その後に繰り広げられるカーペンター・ワールド にノックアウトされました。ジョン・ カーペンター監督作品が大好きで、『エスケープ・フロム・L.A.』 や『ゼイリブ』などの独特なSF作品に痺れまくっている私で あるが、カーペンター作品の もう一つの柱であるホラー作品群には手を出しかねていた(スプラッターが苦手なんで)。 そう いう経緯でこの作品も今までスルーしていたのだが、そんなにグロい作品では無く、 カーペンターが好きなウエスタンぽい作 品だと聞いて鑑賞してみました。
結果は大当たり。男臭くて、ハード・ボイルドな作風。 登場人物達の男同士の友情や、その後の展開を観客に委ねるラスト などは「ゼイリブ」や 「エスケープ・フロム・L.A.」の流れを汲むカーペンター十八番のウエスタン調アクション作品 であると 実感させてくれる。ジェームズ・ウッズ 演じる主人公の男くささやアンチヒーローぶりは カーペンター・フリークにはおなじみ だ。 シェリル・リー 演じる吸血鬼になりかけの娼婦の存在 や主人公とコンビを組むダニエル・ボールドウィンとの泥臭い友 情もも物語に良い起伏をもたらしていたように思う。 いつもの監督作曲のテーマも最高だ。 吸血鬼モノという使い古され た、極めて古典的なテーマを独自に調理し、きっちりと楽しませてくれる のはさすが職人監督・カーペンターだと思う。
私の好きな冒険・SF作家の田中光二氏(彼のSF作品「異星の人」や冒険小説「白熱」は必見。 そういや、B級ぽさや男くさ さ、独特の世界観はカーペンターにそっくりだ、この人の作品は)が 冒険小説の傑作であるギャビン・ライアル著「深夜プラス 1」(ハヤカワ文庫)の後書きでこう書いている。 「単なるエンターティメントではなく・・という言葉がある。エンターティメントにすぎないが・・とい う 表現も有る。エンターティメントの本質とは何か。数時間を構築された虚構の世界に没入させ、 なにがしかのカタルシスを もたらしうればそれで是とすべきなのか。それとも プラス1・・さらにひとつの効用・意義を要求すべきなのか・・この間の機微 がエンターティメントの本質にかかわる 古くて新しい問題なのだろう」と。
カーペンター作品は小難しいテーマ性などとは無縁である(「ゼイリブ」など一部を除く)。そこにあるのは極限まで 高めら れ、カーペンター節を施された純粋な娯楽性が有るのみだ(最新作『ゴースト・オブ・マーズ』を見よ!)。 もっとも彼の作品には中毒性という極めて厄介な「プラス1」が有るのだが・・・・。また、田中光ニ氏は「優れたエンターティメントは再読、再々読に耐えうる」とも書いているが、この点も本作をはじめ、カーペンター作品のほとんどに当てはまると言えよう。 近年はやや、マニアック路線でジェームズ・キャメロンら他のエンターティメント職人監督に興業成績などで差をつけられたように見えるが、それでも独特で娯楽に徹する作風は健在だし、熱狂的なファンも多い。しかし、カーペンター好きな野郎って多い けど、カーペンタ ー好きの女の子っているのかな?いたら是非、居酒屋でカーペンターについて熱く語り合いたい。小一時間ほど(バーとかカフェバーではだめなのよね。やっぱ居酒屋)。『エスケープ・フロム・L.A.』や『ダーク・スター』の波乗りシーンや『ゼイリブ』の10分プロレス、『遊星からの物体X』のラストなどの伝説のシーンの数々を熱く語り合える事だろう。 いずれにせよ、エンターティメントの職人監督ジョン・カーペンターの作品を見られる幸福に感謝したい。
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