[コメント] コマンドー(1985/米)
劇場で観た当時、シュワルツェネッガーはシルベスター・スタローンのパチモン新進俳優だった。『コマンドー』もまーそこそこ面白いものの、『ランボー』のパチモンであることは誰の目にも明白だった。
「容疑者は男性、190cm、筋肉モリモリ、マッチョマンの変態だ」
以来、『コマンドー』は繰り返しテレビで放送された。きっと安かったんだろう。放送を繰り返すうちに時代は移り変わる。インターネットが爆発的に普及し、「実況」などという文化が発生した。そして、実況という場でどんな名作映画よりも盛り上がり、祭り上げられたのが『コマンドー』だった。
「いったい何が始まるんです?」 「第3次大戦だ」
公開当時は普通、ややもすると凡庸にすら見えた『コマンドー』の脚本・演出・演技は、21世紀においては希少な価値と見做されるようになった。ここぞというタイミングのキメ顔、脚本家のドヤ顔が目に浮かぶキメ台詞、ベッタベタな展開。80年代のベタ演出のすべてがバランスよく配された大衆娯楽映画の傑作という、新たな評価を受けるに至ったのだ。
「友達を起こさないでくれ。死ぬほど疲れてる」
オレは脚本家が頭をひねって考えたようなダイアローグが普通に展開される映画が好きで、『カプリコン1』なんか最高だと思ってる。70年代の映画で流行した「気の利いた会話、うまいやりとり」には早川の翻訳小説みたいな愉しみがあるのだが、しかし一般的にはあんまり人気がない。その点1985年の『コマンドー』はかなり雑で、判りやすくストレートなものになっている。英語も怪しいオーストリア出身のボディビルダーが主人公なんだから、これぐらいでちょうどよかったのだろう。
「あいつはどうしたの?」 「放してやった」
21世紀の風潮では、これらのセリフはリアリティに欠ける野暮なものとされがちだ。この手の映画にシリアスな空気は全然ないし、真面目なテーマなんかありゃしない。しかし時々、生理的なレベルでこういうベタな大衆娯楽が欲しくなるんだよなあ。
「来いよベネット! 銃なんか捨てて、かかってこい!」
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