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[コメント] 海と毒薬(1986/日)

遠藤周作の原作がそうだったように、これも極めて宗教的な映画である。戦中、未だ、「自分は無宗教だ」とイキがることもできなかった若者が人体実験に怯えたように、これを観た観客は「神の領域」を冒すことを怖れるのだろう。だが、この映画では無感動になってゆく若医者のほうがナチュラルに感じられた。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







前線では主人公たちと変らぬ世代の若者が、敵を幾人殺すかを競い合っており、そこにおいてヒューマニズムを振りかざす反逆分子のほうが稀有だったことだろう。

戦場と病院は、似ていないようで「生死のやりとりをする場所」という一点において通底している。そこにあって無垢に、人独りの命を終わらせることにそれほどの衝撃を受ける主人公のほうが、不自然に見えてくるのは非常識だろうか。

自分があの場所にあったなら、生き肝をサカナに宴会を繰り広げる愚かな軍人たちには与せぬとしても、あの冷たい目をした不感症の医師にならない保証はどこにもない。これがある「衝撃」を観客にもたらすべく創られた映画なら、彼を主人公にしたほうがより効果は上がったのではないか。

この行為は本当に、人が手をつけてはならぬ「神の領域」に属していたのか?それに背くことが人として正しい道なのだろうか?

(評価:★3)

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