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[コメント] 舞踏会の手帖(1937/仏)

一見リリカルな映像表現も、中身が軽いとただのキザにしか見えない、というのが正直なトコロ。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







青春時代の延長を生きているのではなく、その一地点から時間が止まってしまった女性の話、だと思う。こういう女性が、たとえ不幸のどん底にあろうとそれでも現在を生きている男たちに感じる幻滅って何なんだろう。少なくとも山に生き甲斐を見出した男や、理想にはほど遠いとはいえ町長として頑張ってる男の方が、若き日の甘い思い出を除けば空っぽな彼女の人生よりも、はるかにマシに思えて仕方がない。苦い現実を生きて人生に幻滅するのではなくて、他人の人生を見て勝手に幻滅を味わうという構図が、何ともイヤラしく思えてしょうがない。

新たな人生に踏み出すかのように見えるラストも、イマイチピンとこない。人に「人生なんてこんな程度よ」なんて教えてる場合じゃない、彼女こそ実際に現実にブチ当たって生の人生を味わうべきだろ、なんて考えてしまう。結局あの男の息子に人生を託すというのは、彼女の思い出の中から一番甘いまま残ってるものを選んだだけのこと。何だかなぁ・・・・(ブツブツ)。

そんなワケでリリカルな映像表現を駆使した語り口も、いちいちキザったらしく感じてしまう。なのでベッドのカーテンがワルツを踊るスカートの裾にオーバーラップするシーンなんかより、むしろ堕胎医のエピソードでの不安定なアングルや神経を逆撫でする音の効果などに秀逸さを感じる。さらには安っぽいペシミズムよりも、町長のエピソードでのコミカルな遣り取りの方に魅力を感じたりもする。でもこの監督のウリはあくまでもペシミズム(らしい)。何だかよくワカラン。

アクの強い役者揃い踏みなのはウレシイ。狂った母親役のロゼエと堕胎医役のブランシャールの凄みがとりわけ印象深い。

(2002/9/11 再見)

(評価:★3)

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