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[コメント] 愛に乱暴(2024/日)

淡々と日常を“こなしている”ように見える桃子(江口のりこ)だが、終始、彼女にまとわりつくような視線(カメラ重森豊太郎)が、この女の“ただならなさ”を暗示して不穏だ。その不穏が彼女の外部に起因するのか、内側から発散されているか、初めは分からない。
ぽんしゅう

気になるモノの臭いを嗅ぎ、こまめに手を洗う。繰り返されるそんな日常の行為ですら意味ありげにみえてくる。なんだか不気味な女なのだ。やがて一家の顛末が明らかになるにつれ、彼女が醸し出す不穏さの謎が明かされる。

女は家庭という「カタチ」に満足(充分)を求めていないのだ。「カタチ」という多角的な構造のなかに身の置き所、あるいは置き方を見いだせずに、夫(小泉孝太郎)や姑(風吹ジュン)との「カンケイ」という細い線の上に懸命に満足(充分)を見いだそうとしているようだ。それは彼女が進んで望んだものではないにしても。

そんな歪んだ幸福願望を淡々と、かつ絶妙な存在感で江口のりこが醸し出して実にサスペンスフル。抑制を効かせつつ「現実に心が蝕まれたすえの行動が、さらに眼の前の現実を蝕み行動が暴走する」不条理サスペンスの秀作でした。

小泉孝太郎の存在感のないダメっぷり(褒めてます)も好かったです。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] jollyjoker

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