[コメント] かくしごと(2024/日)
母と子の物語よりも、父と娘の物語の方が心に響いたのは、私が男だからだろうか、それとも年のせい、だろうか。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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特に風呂場で粗相の後始末をしながら、父が泣くのを受けて杏が思わず泣くシーンには、「ああ、そうか」と強く心を打たれた。
子を亡くしていた、虐待されていた、記憶を失っていた、とはいえ、その子を自分の子にしてしまうというのはちょっと無理のある設定だと思うし、その意味では、本作の骨格は寓意的なものとも言えるのではないだろうか。
娘が父との関係を何とかしようと思い立ったのは、その子どもができたからではないか。
子どもの前で、今の父との関係のままでいることは良くない、何とかしなければと感じたからではないだろうか。この意味で、子どもの物語は、父の娘の物語を動かすため、のようにも見える。
でも、子どもについての物語にも、ていねいな演出はあった。特に目をひいたのは、最後の方、強請りに来た男が事切れる寸前、子どもに「お前は逃げれていいな」とつぶやいたように聞こえたことである。
おそらくは彼自身も虐待を受けてきたのではないだろうか。そういうリアルな負の連鎖を感じさせたことは、ラストカットも含めて、この映画に深い余韻をもたらしていると思う。
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