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[コメント] ラーゲリより愛を込めて(2022/日)

ソ連の侵攻、いきなりの空爆シーンでの、家族離散の描写にはちょっと首を傾げた。なんかマヌケな別れじゃないか。爆破ショットのコンピュータ処理もチープな造型でがっかり。
ゑぎ

 しかし、その後の収容所のシーンには、そういう幻滅を感じる部分が無く、全体にしっかり描かれていると思った。収容所に向かう貨車の中で、二宮和也が「いとしのクレメンタイン」を英語歌詞で唄う。これにはかなりの驚き(違和感と云ってもいい)を覚える。いくら知識人だとしても、こんなことがあり得るのだろうか。しかも、この歌が、全編に亘る二宮を象徴するテーマ曲になるのだ。私は原作未読だが、多分、原作に無い、本映画化での創作部分だと推測した(間違っていたら御免なさい)。やはり、ジョン・フォード・オマージュか。であれば良い付加措置だと思うのだが。

 さて、まずは、二宮和也の造型が一番に言及されるべきだと思うけれど、そこは置いておいて、他の主な人物の中で、特筆したいキャラクターが二人いる。一人は桐谷健太、もう一人が中島健人だ。桐谷が二宮や松坂桃李のことを「一等兵、一等兵」と呼び、名前を呼ばない、この徹底が映画として効く。また、桐谷の傲慢さが、不貞腐れ感に変化していくのがいいし、さらに彼の聞き取りづらい発声(ダミ声)も奏功していると思った。あと、黒い仔犬の登場と、ほゞ同時に唐突に出現する中島健人。この登場シーンの鮮やかさが、本作の演出的な部分で一番気に入った点かも知れない。彼の存在は、あざといがとてもいい清涼効果が出ているのだ。また、特筆すべきとまでは思わないが、松坂と安田顕も、勿論重要な役割りを担っており、安定したパフォーマンスだと云えるだろう。

 そして、北川景子だ。本作の彼女は、冒頭から、ずっといいなぁと思いながら見ていたのだ。当然ながら(?)現実離れした美しさではあるが、ピュアな性格付けが彼女に相応しく(二宮との相性も良いのだろう)、私は、映画として充分納得できるディレクションだと感じた。しかし、後半の、庭に出て倒れて叫ぶ演出だけは白けた。この点が残念だ。いつになったら、この人を映画女優として、しっかり描き切った作品が現れるのだろうか。それと、彼女を含めて、終盤の登場人物の泣き過ぎのディレクションも、私はやり過ぎだと思う。本作は涙腺刺激映画としてかなりのものだと思うが、このあたりは観客の好みによるだろう(この趣向が好きな人にはたまらない作品でしょうね。私とて、二人の母親、市毛良枝朝加真由美の泣き顔の威力には抗しきれなかった)。尚、エピローグもクドイと思う。寺尾聡田辺桃子が役にありつけた(この二人を見ることができた)のは嬉しいが。

(評価:★3)

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