車を運転するのは、宮川大輔。右の助手席に西島秀俊、後部は左から斎藤工、玉城ティナ、三浦友和。彼らがプロットの端緒となる現金強奪事件のメンバーだ。強盗の舞台は寂れたラブホテルか。フロントは宮沢氷魚。とても期待が高まる緊張感溢れるオープニングなのだが、実は、強奪が始まると、なんか上手くない。玉城が騒ぎすぎるのが、イヤな感じ。全体にスタイリッシュ感がイマイチなのだ。いいところまで行っているので、余計に残念に感じる。

　例えば斎藤工が襲われる喫茶店の場面も、関係ない人を殺し過ぎだろう。もっと客が少なくていいと思う。沢山殺せば怖さ（狂気）に繋がるわけではない、ということがようく分かる。あるいは、宮沢と玉城が監禁されているバーの造型もやっぱりカッコ良くない。ダンスシーンもカメラが寄り過ぎだと思う。全体に寄りすぎのアングルが気になった。観覧車の中の大森南朋のショットだとか。

　その他の役者について。奥田瑛二はやり過ぎ。彼の語るエピソードも面白くない。奥野瑛太、鶴見辰吾はいい。特に奥野は迫真の演技だ。助演賞モノじゃないか。三浦友和の部下というか、配下の若者３人が、前田旺志郎、若林時英、青木柚という人気者３人で、とても贅沢な使い方だ。逆に云うと、もう少しフォーカスをあててもよかったのでは。青木柚なんか、ちゃんと顔が映らないので可哀想だと思った。この３人のガスステーションでの顛末の後、ビル屋上の三浦の場面に転換し、三浦がガスステーションの方を見るショットは良かったが。

　あと、ラストカットのゆったりとしたパンはカッコいい。ちょっと『気狂いピエロ』みたい。しかし、海の向こうに見える山は富士山だろうか。雲が多くてあまり綺麗に撮れていないのだ。最後まで残念な感じ。

＃西島のおうち（家）は伊東だと思ったが、海越しに富士山が見えるだろうか？ちなみに、三浦は山梨。斎藤工は八王子、多摩市あたりか。