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[コメント] 偉大なるアンバーソン家の人々(1942/米)

余計な寄り道もせず、死者にすら歩みを緩めることもなく。ひたすら叙事詩的なリズムで紡がれる物語。時間なんて問題ではない、これは堂々たる大河ドラマ。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







死はあっても、「死に顔」は登場しない。さらにはラストの感動の再会も、扉の向こう側の出来事。そのようなシーンで情に溺れることもないので、コチラとしては常に流れる時を体感しつつ映画を見ることが出来る。そして、そうすることに意味がある。一言で言ってしまえば、まさに「時の流れ」の物語なのだから。

「いつかツケが回ってくる」と言われながらも、実際罰を与えたのは人間ではない。裁くのは「時」であり、また許すのも「時」。少なくとも神という概念が希薄な自分には、そう思えた。長い年月をかけた物語である意味は、名家が没落するまでの道のりをただ気長に辿ったというよりも、「罰を与えたい」と思ってた人間がこの世を去り、その人々の手の届かないトコロで裁きを受けることに意味があるからだと。

そして安易に没落という罰を与えるのではないことも分かる。母親が若い頃には傲慢だったように、主人公もまた「母親に似て」傲慢だったのだ。ただ主人公の方がやや度を越していたり、それに気付くのが遅いだけで、共に「強さ」を秘めた人物であることが、それぞれ二つの時を重ね合わせることで分かるようにもなっている。

時の流れで周囲が変わっていく中でも、変わらない愛情がこの物語の軸となり、ラストに至ってはそれが形を変えて受け継がれていく。明暗のコントラストを利かせつつ空間を十二分に活用した画面も手伝って、90分弱という時間では考えられないほどにどっしりとした完成度を誇る大河ドラマだと思う。

とはいえ、これだけの完成度を誇りながらも、さらに130分位のバージョンがあるというのがやっぱり気になる。見れるのだろうか?[4.5点]

(2003/3/3 再見)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)死ぬまでシネマ[*] ゑぎ[*]

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