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[コメント] マトリックス レザレクションズ(2021/米)

ジェネレーションZはマトリックスの夢を見るか?
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







焼き直し? いまさら? なんで? まあ決まったことだからしょうがないじゃん。やるからには1作を超えたいよね。頭とお尻でワーナーブラザーズの実名まで出しての楽屋話。ご丁寧にエンドクレジットの後にわざわざ自虐ネタまでぶっこんでいる。さぞや苛立っているのかと思いきや、なんかもう全然醒めている。まあ大人がやりたがってんだしいいんじゃね? というような達観というか諦観というか。ネオとトリニティのフルムーンカップルをZ世代がバックアップしていくという本作の物語の構造が、そのまま製作背景を体現しているようだった。なんかちゃんと老人たちにリスペクトしているところに若者たちの優しさ(本当にそれが優しさなのかどうかわからないけど)が垣間見える。私のような老人には決して悪い気はしない作品である。アラカンカップルでもハリウッドのメガコンテンツで主演をはれるんだ、という証明はわれわれシニア世代に勇気を与えてくれる。

1作目を見直すとよくわかるけど、ネオやトリニティ、モーフィアスらは、コンピュータウィルスで、エージェントスミスはセキュリティソフト。そのプログラム同士の「対決」の様子をカンフーアクションで擬人化して見せることを面白いと思う発想が、80年代に誕生した仮想空間をモチーフにしたサイバーパンクの一ジャンルで、もう40年も前の発想だ。それを当時楽しんできた世代の夢見る「虚」と「実」の世界の夢物語は、「実」の世界がまだまだ表向きは順調であって、でもそんな世の中に少し不安を覚える自分という感性が感じていた「虚」と「実」であって、確かに老人世代は「もしかしたら世界はこんなふうかもなぁ」という空想を楽しんだわけだけど、それはデジタルネィティブに言わせれば寝言のように聞こえるのではないだろうか? 実の世界が住みにくくてどうみても順調ではない世界に生きる彼らが感じている「虚」と「実」と同じものとはどうにも思えない。かれらがよくいうパラレルな世界の表現である「世界線」という言い方とは感じているものに断絶があるような気がする。したがって1作目のパスティーシュである本作の物語を、作り手たちは何も信じていないで作っているような、そういう感じがするのだった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)週一本[*] pori[*] MSRkb ロープブレーク[*]

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