[コメント] ソワレ(2020/日)
例えば、芋生悠−タカラが、スナックから逃亡する際の、裏口から出て走るタカラに、スナックのママがちょっと追いかけて来る見せ方。店内から裏口と、道とオフ(画面外)の玄関側の空間を、人物の動きによって上手く見せていると思った。あるいは、タイトルを表す、夜、市民会館の前みたいな場所での、安珍清姫の芝居のイメージシーン。最初にタカラが寝ているベンチから、起き上がって、浅い池のようなところを歩き、舞台へ移動する。このような人物の動かし方と背景の変化が面白い効果を出す。こういうよく考えられた演出が続くので、緊張感が弛緩しない。
たゞ、もうちょっと切なさの押しを加えても良かったんじゃないか、とも思った。これは好みの問題で、本作ぐらいの潔さが調度良い、と思う方も多いかも知れませんが。例えば、村上虹郎が、高校時代に文化祭で映画を作った話をする場面。こゝで、芋生悠も居合わせている(洗濯機の操作を教える)のだから、もうちょっとだけ演出を加えていても、とか、廃校の黒板のシーンで、もう少し仕掛けがあってもよかったのではないか、とか考えてしまうのだ(いや、あの簡潔さがいいか、とも思うのだが)。
劇場予告編がとてもカッコよくできていて(『クーリンチェ』を彷彿とさせるようだと思っていた)、かなり期待して見たのだが、ちょっと肩透かし感はある。矢張り、予告編で採用されていた、空き家での防災ラジオのシーンが、一番いいシーンだ。この空き家での場面がとても短かったのが、肩透かし感としては大きい。あと、若干マイルドにはなっていたが、不特定関西弁ではない、和歌山弁がちゃんと使われているのは好感。
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